NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」5月8日(2022年)の放送回。苛烈さを増す源平合戦。必死の抵抗をみせる平宗盛(小泉孝太郎)率いる平家軍に対し、源頼朝(大泉洋)は義経(菅田将暉)に四国、範頼(迫田孝也)に九州を攻めさせ、逃げ道を塞ごうとしていた。しかし、範頼軍は周防で足止めをくらい、義時(小栗旬)と三浦義村(山本耕史)らが状況の打開に奔走していた。(ネタバレあり)
喜々とした戦闘ぶりから一転
一方の義経軍は、大嵐のなかで屋島に渡れずにいたが、坂東武者たち忠告をよそに、義経の兵だけで先に大海をわたる。そして屋島の戦いがアッいう間に義経の勝利で終わり。ついに壇ノ浦である。
それにしても、義経の喜々とした戦闘ぶりは、演出もまるで空を舞うようだった。突出して独りだけ神がかっている感じは、いささか「やりすぎ」で、その後に頼朝に嫌われるのも頷けてしまう。義経の「乱舞」を外から見ていた坂東武者たちは、非戦闘員である船の漕ぎ手までを殺してしまう非情な行為にドン引き。ああ、頼朝が怒るよ。
そして壇ノ浦といえば、安徳天皇の入水である。知ってはいたもののどんな脚本と演出に仕上がっているか見入っていた。三種の神器と一緒に壇ノ浦の灘に飛び込んでいく場面、しかしどこからどう見ても普通の子供である。一方、義経は唐突に「ウソだろ‥‥」とどんぐりのような少年の目になっていた。非情な義経だって普通の青年なのである。ふと我に返ってみると、子どもと若者が戦場にいる恐ろしさに気づく。安徳天皇の入水シーンはネットでも「無言の演出に涙が出た」「『嘘だろ...』って言う時、今までで一番素っぽい声だった」「辛すぎる... 助ける知恵はなかったのか」といった反響が出ていた。
栄枯盛衰で平家が滅亡した。ドラマのなかでは一瞬の出来事のように語られたので、平家の栄華が短命だったことに通じるものがある。しかし大勢の戦闘員が死んだのは間違いない。今後は、頼朝の怒りの行方がどうなるか、どれほど冷酷であるか、そして義経がどれほど普通の青年になっていくか、楽しみである。
(Y・U)