知床半島沖の観光船事故で、海底に沈んだ船体などの不明者捜索のため国交省が民間船と契約した費用が8億7700万円に上ることが明らかになった。3日(2022年5月)の「The Time、」が伝えた。
海上保安庁は、船内に取り残されている可能性がある行方不明者の捜索のため、民間の専門業者と契約したことを明らかにした。斉藤鉄夫・国交相は2日、「より高度な資機材を有する民間の事業者にも要請し、行方不明者の捜索にあたってください」と語った。
海上保安庁が「知床遊覧船」を業務上過失致死容疑で家宅捜索
契約したのは、海難救助と海洋工事を専門とする民間企業「日本サルヴェージ株式会社」。「飽和潜水」という、潜水士があらかじめ加圧された特殊な部屋に入って身体を慣らし、部屋ごと海中に降ろす方法を採用するという。潜水は今月中旬以降になる見込みだ。
費用は8億7700万円に上り、国が負担する。今回の契約には、船の引き揚げ費用は含まれていない。朝日新聞によると、法律上、引き揚げは船の所有者などが行うことと解釈されているが、原因究明のため国が追加で契約するという。
海上保安庁は2日、沈没した観光船「KAZUⅠ」の運航会社「知床遊覧船」や桂田精一社長の関係先などを業務上過失致死などの疑いで家宅捜索した。安全管理体制に問題なかったかなどについて捜査を進める。
一方で、事故の3日前に、豊田徳幸船長が、現場海域でつながらない携帯電話を通信手段として申請したことについて、法定検査をした日本小型船舶検査機構(JCI)の札幌支部(札幌市白石区)は2日、「検査は船舶安全法に基づき適正に行われたと認識している。具体的な検査について法律の解釈をする立場になく、検査については国交省の海事局に聞いてほしい」。
豊田船長の携帯電話が通信エリア外だったにもかかわらず、検査を通したことについては、「キャリア会社のエリアマップも正しいのか、エリア外でも通じることがあると聞いている。虚偽報告があっても実質、調べられない」とした。事故では、乗客ら14人が死亡12人が行方不明で、捜索は難航している。
番組はこれ以上言及しなかったが、観光船などの「安全の費用」が現時点で、少なくとも8億円余りに上っていることを関係者は思い知るべきだろう。運航会社のずさんな運航はもとより、法定検査にも問題はなかったか。今後、こうした「安全軽視」の全体像が問われることになる。
(栄)