知床半島沖で観光船が消息を経ってから5日目のきのう27日(2022年4月)、運航会社社長が初めて会見し、謝罪をした。司会の羽鳥慎一は「会見前には乗客の家族への説明会が開かれましたが、社長の説明には憤りの声があがり、涙ながらに訴える場面もみられました」と切り出した。
27日夕、記者会見場に姿を現した知床遊覧船の桂田精一社長は、会見冒頭で10秒ほど土下座。着席して謝罪の言葉を読み上げた後、再び土下座をした。事件当日は「船長から海が荒れるが出航は可能との報告があり、荒れた場合は引き返すという条件付きで出港することを決めた。その判断は甘かったと感じている」などと述べた。
「条件付き出航」にも批判の声
この会見の前には乗客家族への説明会が開かれた。大型バスで会場に来た家族は約60人。番組では独自入手した説明会の音声を流したが、そこには乗客家族の悲しみや怒りの感情が溢れ、時に声を荒らげて社長に怒りをぶつける家族の声も残されていた。たとえば、うつむいて謝罪文を読み上げる社長に対して「紙に書いてあるのか?こっちを向いて話せ!」「何で今なんだよ。遅いだろ。それまでどういう気持ちでいたんだ!」「漁師さえ出向しないのに船を出すバカはいない」など激しいものもあった。説明会は1時間の予定だったが、2時間以上に及び、参加した家族によると説明会でも桂田社長は土下座したという。
この日、知床遊覧船の事務所前では国土交通省の運輸安全委員会が屋上にある無線アンテナを撮影する姿が見られた。会見で社長は、「当日朝に無線アンテナが破損していることが判明し、すぐに修理の依頼をした」と話したが、漁業関係者によると「故障していたのは当日ではなく、4月の頭頃からだった」と証言している。さらに別の通信手段となる衛星電話についても「調子が悪いとは聞いていたが、使えないという認識はなかった」と話している。
また、同社では出航の判断基準として、波が1メートル以下、風速8メートル以下、視界が300メートル以上ならば出航で、それを超える場合には条件付き出航になると説明したが、国交省によると「条件付き運航はありえない」と話している。桂田社長はそれでも出航させた理由について「(客が波による揺れを)体感して『もう戻ってくれ』みたいな気持ちになって、帰港を納得していただける方法を取っていた」と説明していた。
ゲスト解説の海事補佐人でもある阿部弘和弁護士は「条件付き出航がどのような位置づけだったか、船長判断には具体的基準があったのか、またその訓練があったのかが問題になってくる」と指摘したうえで、「客の命を預かる旅客船は安全が最優先。客に体感してもらうというのは少しピントがずれていると思われる」と話した。
社会活動家の石山アンジュは「海については素人に体感させるというのはリスクが伴う。このやり方はどうだったのか。また会見での説明も二転三転する部分があり、認識が甘かったという印象がある」とコメント。
テレビ朝日の玉川徹が「安全管理がずさんです。漁師さえ出航しないのに出航するのもずさんですし、もうあらゆる意味でずさんです。大切な人を突然失った家族の方々からしたら理不尽で、気持ちのやり場がない。社長は最後の最後までご家族の怒りと理不尽さを受け止める責任がある。金銭的な賠償だけでなく、気持ちの問題も一身に引き受けるべきです」と訴えた。
(バルバス)