4月23日(2022年)、北海道知床半島の観光ツアーで悲劇が起きた。
遭難事故を起こした船は定員65人の観光船「KAZU I(カズワン)」。子ども2人を含む観光客24人と、乗員2人の26人が乗船し、午前10時に斜里町ウトロ港を出港。45キロ先の知床半島先端までを約3時間で往復する予定だった。しかし、午後1時13分、半島先端から15キロほどにあるカシュニの滝付近で、KAZU Iから「船首部分が浸水している。エンジンが使えない」と救助要請が入る。その後、午後2時の「船首が30度ほど傾いている」を最後に船からの連絡は途絶えた。
船体に亀裂情報、単独出港で「仲間の船もいなかった」
なぜ事故がおきたのか、「めざまし8」は現地で独自取材を行うとともに、スタジオに水難事故の専門家を招いて話を聞いた。
当時、海は3mほどの波で風は16m、海水温は3度。地元の漁師は「西風が吹いていて、昼から北風になって波が出るというのはわかっていた」と語る。事故後、現場海域では海上保安庁の巡視船やヘリコプター、さらに地元漁師も捜索活動を行い、25日朝までに11人が救助されたがそのうち10人の死亡が確認されている。
KAZU Iは去年の5月、6月に事故を起こしていて、船体に亀裂が入っていたという証言もあるが、船長は「検査したら問題なかった」と出港を決めたという。地元の漁師は「前の船長は知っているけど、1、2年前にかわった」「船長さんは面識がない」と語る。さらに数名の従業員が「安全面に不安がある」辞めていたという。
例年、知床観光船ツアーが始まるのはゴールデンウィーク頃からで、事故を起こした船は他社より早くツアーを開始、単独で出港していた。別の観光船乗員は「仲間の船がいれば、助けることができたかもしれない。一隻だと何かあっても対処できない」と語る。
斎藤秀俊(水難学会会長)「まさに海の怖さが凝集した事故。(釧路からの救助のヘリが3時間かかっているが)機材の準備時間などで海難事故ではこれくらいが標準時間。救命胴衣は浮かぶためのもので泳ぎにくい。水温が低いので、落水とともに体が動かなくなる」
長谷川ミラ(モデル)「昨年末に知床、羅臼に取材で船に乗った。波浪注意報が出ていたとしても、船員の方が大丈夫というと信じてしまう」
斎藤秀俊「船というのは船長がすべて。船長が出港できると思えば出港する」
橋下徹(弁護士)「船長の判断が重要で、事細かにすべてルール化するのは不可能。こういう時こそ地方分権。地域によっては『複数の船で出ること』をルール化できると思う」
古市憲寿(社会学者)「海水温3度ということですが、冷たいサウナの水風呂でも10度。春の海は危なさがあると再確認させられました」
(みっちゃん)