WOWOWで3月12日から4月2日まで、午後10時から、1時間枠で放送された「正体」全4話を見ました。
これは染井為人さんの小説を原作としたサスペンスドラマです。主演は亀梨和也(KAT-TUN、ジャニーズ事務所)、黒木瞳も助演で出演しています。監督は「リング」で有名な中田秀夫と、谷口正晃です。(※この原稿は、ネタバレを含んでいます)
亀梨和也が演じたのは、一家惨殺事件の犯人として死刑判決を受けた主人公・鏑木慶一です。鏑木には身に覚えのない事件で、移送中に刑務官の隙をついて脱獄・逃走します。目的は、一家惨殺事件の被害者の母親で一人だけ生き残り、唯一、犯人の顔を知る井尾由子(黒木瞳)に、自分の無罪を立証してもらおうと考えたからでした。
しかし、井尾由子(黒木瞳)は以前から、若年性認知症を患っていて、一家惨殺事件の後には、介護施設で療養していました。
鏑木(亀梨和也)は逃走し潜伏していく過程で、いろいろな人達に出会い、最終的には井尾(黒木瞳)にそれとなく犯行時の様子を聞くのですが、井尾は肝心な所になると若年性認知症のせいかはっきりしません。
しかし、裁判では、井尾(黒木瞳)が自分の証言は検察の強要による「刷り込み」だったと証言したのです。
亀梨和也と黒木瞳が演じきった人間の葛藤
黒木瞳の演技には、若年性認知症というハンデを乗り越えて証言する、という迫力が見られました。結果、逆転無罪を獲得した鏑木(亀梨)の目には、涙が溢れていました。潜入先のどこへ行っても、自分が不利になることを顧みず、他人の窮地を救ったことも、逆転無罪につながったと思います。
以前、このコラムにも書きましたが、「野ブタ。をプロデュース」(2005年)の時の亀梨の自然体の演技に魅力を感じましたが、今回の「正体」での彼の演技には計算という成長の跡が見られました。
突然降りかかった不幸にめげず執念の塊になった鏑木(亀梨)と、介護施設でも感じよく、施設の人気者である井尾(黒木瞳)との対比の中で、不利を顧みず他人に尽くそうとする鏑木の葛藤が良く描かれていて、秀逸な作品だと思いました。