ロシアのウクライナ侵攻が始まってから間もなく1カ月になるが、当初は短期での決着を目論んでいたとみられるプーチン大統領に「焦り」が見られる場面が増えてきた。21日(2022年3月)の「スッキリ」は、ロシア側の「焦り」に焦点をあてた。
ウクライナ南東部のマリウポリでは18日、子どもや女性ら約400人が避難していた美術学校が空爆されたと地元当局が20日に発表した。このほかにも、数千人がロシアなどに強制連行され、「パスポートを取り上げられている」とも伝えられる。また、ウクライナ国防省情報機関は20日、ロシア民間軍事会社「ワグネル」の新たな部隊がウクライナに入った、と伝えた。ゼレンスキー大統領らの暗殺が狙い、とされる。
プーチン大統領の「焦り」
一方で、ロシア国内では18日、「クリミア併合の日」の記念式典が開かれ、モスクワのスタジアムに約20万人が集まった。プーチン大統領は、「市民を苦難の大量殺戮から救うことが、ウクライナの軍事作戦の目的だ」。このイベントについて、筑波大の中村逸郎教授は、「愛国主義を高揚させる絶好の機会だ。ただし、地元の町村役場や学校の子どもたちにバスが用意されて動員された、という話が出ている。これまでの経験では1500円から2000円の現金が渡される」。イベントの映像では、プーチン大統領の演説途中で、映像が切り替わり、別の映像が流れた。中村教授は「おそらくテレビ局、報道関係者・技術者などの間で、ウクライナ侵攻に対する不信感を持っている人がいて、まるで技術的な障害が起こったかのように、演説を途中で切った」と見る。
このほか、プーチン大統領の「焦り」を感じさせる場面として、番組は超音速ミサイル「キンジャール」の使用を挙げる。19日のロシア国防省の発表では、ウクライナ南部の燃料貯蔵基地をこのミサイルで破壊した。これはマッハ10で飛ぶと言われ、通常のミサイル防衛システムではこれを打ち落とすことはできない、とされる。核弾頭搭載可能だ。
さらにプーチン大統領は、19日のルクセンブルクの首相との会談のなかで、「アメリカがウクライナで行っている生物学的な軍事活動は、受け入れられない」と言及した。ロシアが生物化学兵器を使った場合に、ロシアが使ったのではなく、攻撃した先が生物化学兵器の製造工場・アメリカの研究施設だった、としようとの狙いでは、との見方がある。
こうしたなかで、プーチン大統領は17日のトルコ大統領との電話会談のなかで、ゼレンスキー大統領と「対面で交渉が必要になる」と語った。
読売新聞の橋本五郎・特別編集委員は、「首脳会談には前提がある。ロシアが圧倒的に戦局有利になるという状況だ。プーチン大統領は自著の中で、プーチン流儀とは、途中で中断することなく最後まで徹底的に戦う必要がある。なぜなら敵は最後の力を振り絞って全力で戦いを挑んでくるに違いないから、と言っている」。
(栄)