2月13日(2022年)のNHK大河「鎌倉殿の13人」。平家方の大庭景親(國村隼)らに大敗を喫した源頼朝(大泉洋)。敵の追撃から必死に逃れる頼朝は、安達盛長(野添義弘)らとともに石橋山の山中に身を潜める。頼朝の隠れていた場所は暗い洞窟の中で外は土砂降りで雷が轟いていた。
逃げる頼朝たちを必死になって探す平家方の一党。「そこの茂みを見てきていただけますかな」と頼まれた梶原景時(中村獅童)が暗い方へとひとり進んでいくと、頼朝が潜んでいる洞窟へたどり着く。「あー!見つかる」というシーン。有名な場面とはいえ視聴者も息を飲む。
心音が聞こえてきそうな...
景時の眼光がギラリ開きジーっと洞窟の中を見つめる。ドラマでは頼朝と目が合っているが、実際にはよく見えなかっただろう。しかし漆黒の闇の中、生死を分ける一瞬の人間の神経は研ぎ澄まされ、敵味方が嗅ぎ分けられるのだろうね。景時も頼朝だとすぐにわかったのだ。また目が合っている相手の頼朝の表情も固まってしまって、いつになく心音が聞こえてくるほどの焦りを感じスリルがあった。まるで山中で大きなトラに出くわし、フリーズしてしまう感じ?と勝手に想像してしまった。
また景時が頼朝と睨み合っていると、洞窟の上に大庭の兵が現れた。景時が「このなかには誰もいないぞ」と叫ぶのかしら?とよぎったが、そのまま兵士たちは去っていった。梶原景時が頼朝を見逃すと決めたことを表す演出だったわけだ。
そして景時もその場を去っていく。こうして頼朝は命を助けられた。「『頼朝が居たぞー!』って討ち取ったら、その後の歴史は変わっていたし、鎌倉幕府も開かれなかったのね」「梶原景時の洞窟のくだりキタキタ」などネットでもこの場面は注目を集めていた。
この名場面、中村獅童さんの演技が素晴らしかった。静かな凄み、武士ならではの眼光、沈黙の間の取り方はさすがの振る舞いだった。「グッと惹かれたのは中村獅童さん演じる梶原景時が佐殿を無言で見逃す場面」「中村獅童の梶原景時、良い感じでしたね~」などの声も。
一瞬の出来事が歴史を創っていくものだとつくづく思うシーンだった。その後源氏の世の中になり頼朝から信頼された梶原景時は、どうやって権力を誇示していくのか。ドラマの展開が楽しみだ。
(Y・U)