「103メートルの大ジャンプ」。記録が消えた。北京五輪で初めて行われたスキージャンプ男女混合団体で、1番手で飛んだ高梨沙羅選手(25)の最長不倒距離ジャンプが「失格」となった。ジャンプスーツの「太もも回りが2~4センチ太い」ことが抜き打ちチェックで違反となるルールについて、8日(2022年2月)のスッキリが議論した。
大混乱の始まりは2番手の佐藤幸椰(ゆきや)選手が飛び終わった直後だった。実況アナが「いま手元に入ってきた情報ですが、ニッポン高梨沙羅選手がスーツの規定違反で失格ということになりました」。1回目のポイントは無効(0点)となった。
五輪メダリストも「疑問だ」
混合団体は、女子と男子が交互に飛び4人の合計点で争う。高梨選手はトップバッターとしてチーム全体の勢いをつける、重要な役割だった。4日前のノーマルヒルで4位に終わったショックを切り替えて臨んだ。103メートル。全体のトップに躍り出た高梨の顔に笑顔がこぼれた。1人目を終えたところで日本はスロベニアに続く2位につけた。佐藤選手もK点越えの99.5メートル。日本チームが勢いづいたその矢先だった。
両手で顔を押さえてうずくまる高梨選手の姿が画面に流れた。しかし、「失格」の混乱は、これで終わらなかった。各チームの1回目のジャンプが終わったところで、2位だったドイツチームのアルトハウス選手もスーツ規定で失格となった。オーストリアの選手も。10チームで争う競技は、上位の8チームが2回目のジャンプに進むことができる。日本は他国の失格で、8位に上がり、2回目の出場権を確保した。
スキージャンプのスーツについては、選手の体形に応じて厳しい規定がある。日本の横川朝治ヘッドコーチによると、高橋選手が違反とみなされたのは「太ももが2センチ大きかったということなんですけれど。選手は何も分からずスタートしているので、スタッフのミスです。ちゃんと合わせられなかった」「普通はウエイトトレーニングでポンプアップしてサイズが合ってくるが、思ったより上がらなかった」。違反とされた高梨選手はノーマルヒルの時と、同じスーツを着ていた。
2回目に臨んだ高梨は、何とか気を取り直して98.5メートル。高梨は涙を抑えきれなかったが、2回目の1人目終了時点で日本は5位に浮上。さらに2人目佐藤も続いた。その後、今度は、2位だったノルウェーの女子選手2人が失格に。全部で5人が失格になった。
日本は4位に。最後の小林が106メートルの大ジャンプ。その足で高梨に走り寄って抱きしめた。「めっちゃナイスジャンプだった」。しかし、銅メダルには8ポイント及ばなかった。
ソチ五輪団体銅メダリストの竹内択さんは、「(ジャンプ競技での失格は)W杯でもたまにあるな、という程度。まさか、五輪で強豪が軒並み失格になる、しかも女性ばかり失格になったのは、疑問だ」「すべて抜き打ちチェックでランダムに行われる。しかも太ももは、測る人の強弱によって大きさが変わる。あいまいな部分がある。W杯ではあまりなかったのに、いきなり五輪で厳しくなったという印象だ」。
MCの加藤浩次は、「飛ぶ前に、全員チェックすればいいんじゃないの、と思うけど。」
コメンテーターの高橋真麻(元女子アナ)は、「規定違反になったら失格になるくらいすごいチェックなのに、なぜ、そんなにあいまいなのか。選手は五輪に向けて4年間かけて準備しているんだから、せめて五輪ルールで事前にチェックするとか。してあげないとかわいそうですよ」
(栄)