雛子の弱音に「冗談じゃねえ!」
雛子は店に出向くが、1人で開店準備をする道夫に何も言い出せない。様子を見に来た涼に、店の中で
「ほんと、どうしようもないよね私。辞めろとも言えないし、説得もできないし。やばいよね。ないんだよね私、シェフに変われって言う資格」
「会社入った頃はさ、私も大牙くんみたいにやる気満々でさ、自分で企画出したりとか結構頑張ったりとかしちゃったりして。自分に期待もしてたし。でもなかなか結果が出なくてさ、気付いたら目の前のことこなすのでいっぱいいっぱいになっちゃってて。自分が何をしたいかなんて分かんなくなっちゃった」
「30(歳)までこうやって生きてきたんで、いまさらちょっと社長になったぐらいじゃ変われませんって。無理なんだよね、私には。別に好きで社長になったわけじゃないしさ」
などと弱音を吐く。それを聞いた涼は、
「俺はそんな人に負けたんですか。俺、自分の企画に自信があったんです。でも選ばれたのはあなただった。好きでなったわけじゃない?冗談じゃねえ!そんなやつの下で働かされるこっちの身にもなってみろよ!」
と吐き捨てて店を出て行った。
雛子は寛人に辞意を伝え、セゾンヌヴェルの前を通りがかってもそのまま立ち去ろうとする。しかし扉が開いていたのに気付き、店の中に入る。
厨房では道夫が新メニューの開発に取り掛かっていた。雛子と涼の店での会話を聞いていた道夫は、
「俺がやんなかったらあんた辞めちまうと思ったからさ。そうなったら後味悪いじゃねーか」
「元の店の経営が上手く行ってねえことは、ほんとはずっと前から気付いてたんだ。見て見ぬ振りをしてただけなんだよ。でも、思ったんだ。俺は変わんなきゃいけねえんだなって。だから、あんたも30で変われねえなんて言うなよ」
と雛子に伝え、雛子と2人で新メニューの開発を進めることに。試作と試食を夜が明けるまで繰り返し、晴れて新メニューが完成した。