五輪体操で個人総合2連覇した内村航平選手(33)が現役を引退することを発表した。11日(2022年1月)の「モーニングショー」が速報で伝えた。
内村選手は、ロンドン五輪(2012年)、リオ五輪(2016年)の個人総合で金メダル。とくに鉄棒の「完璧な着地」で知られ、「ミスターパーフェクト」と異名をとった。「着地は絶対止めてやるという強い気持ちで。これだけよい演技で、一番良い色のメダルが取れたので、本当に一番幸せ者だと思います」。リオ五輪での表彰式直後に、金メダルを首にかけながら語った。
「王者の着地」
両親とも体操選手の「体操一家」に生まれた内村選手は、両親が経営する体操教室で3歳から体操を始めた。高校進学を機に上京、その後、日本体育大学へ進学。初めての五輪出場は2008年の北京五輪で大学2年生だった。団体と個人総合で、銀メダルを獲得、日本体操界のエースとなった。12年のロンドン五輪では、個人総合で予選9位。追い込まれて挑んだ決勝では、跳馬や鉄棒で完璧な着地を決め、初の金メダルに輝いた。しかし、団体では銀メダルに終わった。
個人総合2連覇がかかった、16年のリオ五輪はまさに「内村伝説」となった。3種目目のつり輪が終わった時点で3位。4種目目の跳馬で2位。最終種目の鉄棒で、「王者の着地。その演技にゆるぎはない。これぞ内村。逆転の金メダル」。実況中継アナが叫んだ。団体でも、最後の種目の床で「内村航平、金メダルへの着地」。ロシアと中国を抑えた。
しかし、その後は両肩のけがなどに苦しめられ、痛み止めを打ちながら競技を続けてきた。4大会連続の出場となる東京五輪では、けがを考慮して、個人総合をあきらめ鉄棒だけに絞った。しかし、昨年7月の競技で落下。「心ここにあらず、みたいな感じで。これまで準備してきたものを出せなかったのは、本当に悔しいしかないですね」。まさかの予選落ちで、内村選手の東京五輪は終わった。「体操するのはもういいのかな、と思っちゃったりしました。やることじゃなくて、後輩たちに伝えていく立場だと思った」。
東京五輪から3カ月後。故郷の北九州市であった世界体操(昨年10月)に出場。結果は6位だったが、鉄棒で、これまで追求し続けた「完璧な着地」を果たした。「自分が一番、着地っていうところはこだわってやってきたので。世界一になるかならないか、っていう場面で、ぼくは決めてきた自負があるので。世界チャンピオンとして居続けられたというのもあるし。それを下の世代に伝えたって感じですね。身をもって」。
(栄)