アカデミー賞3冠を制した「ノマドランド」が描く、生きるとは?

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   先日、WOWOWで映画「ノマドランド」を見ました。

   「ノマドランド」は2021年アカデミー賞の3冠を取りました。主演女優賞(フランシス・マクドーマンド)、作品賞、監督賞(クロエ・ジャオ/39歳の中国人女性)です。

   「ノマドランド」の「ノマド」というのは「遊牧民」という意味です。

   主人公ファーン(フランシス・マクドーマンド)は60代の女性。アメリカ・ネバダ州の企業城下町に暮らしていましたが、リーマンショックの影響で住み慣れた家を失ってしまいます。ファーンは、最低限の家財道具や亡き夫との思い出の品などをキャンピングカーに詰め込んで車上生活を送ることを決意。日雇いの職を求めて、全米各地を放浪するノマド(遊牧民)生活が始まります。

  • 新たな視点で再度見たくなる作品(写真はイメージ)
    新たな視点で再度見たくなる作品(写真はイメージ)
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家をなくしても、誇りをもって自由に生きる旅を続ける姿に共感

   長く連れ添った夫が亡くなり、家を60代に失いノマドとなったファーン(フランシス・マクドーマンド)ですが、彼女を縛るものは何もない生活です。姉からも「一緒に住もう」と誘われ、旅で知り合った男性からも「好きだ。家族と一緒に暮らそう」と誘われますが、ファーンは誇りをもって、自由に生きる旅を続けることを選びます。

   私はファーンの生き方に少し疑問を持ちましたが、老人と夜、焚火にあたりながら会話をするシーンに答えを見つけました。

   老人がファーンに言います。

「ノマド(遊牧民)の人は、さよならと言わない。またね、と言って別れる。すると、実際にまた会える」

   旅に出て、いろいろな人に会おうとしているし、また、実際に会っているファーンに共感をもちました。

   ラストシーンに近い所でファーンは、夫と一緒に住んでいた、今は廃墟となった町の自分の家に行きます。以前男の人に「好きです。一緒に暮らそう」と言われた時に、彼の妻に「社宅の一番端で、裏庭から砂漠が見えるのが好き」と伝えた砂漠へと向かいます。ラストシーンは、車で移動する所で終わるのです。

   引き込まれそうな大自然の映像美と共に映し出されるロードムービーは、何とも言えない人生の寂寥感を描きます。しかし、ファーンやノマドの生き方に、確かな歩みと暖かさを感じました。

   アカデミー賞の主演女優賞・作品賞・監督賞を取ったのも、当然のことと思えます。主人公ほか1名を除き、ノマドは役者ではなく実際のノマドが演じたのだそうです。その視点から、再度見たくなる名作といえます。

渡辺弘(わたなべ ひろし)
渡辺 弘(わたなべ ひろし)
1952年生まれ。東京大経済学部卒業。1976年に日本テレビに入社し、制作局CP、ドラマ制作部長として番組づくりの現場で活躍。編成局長、制作局長、取締役報道局長、常務・専務を歴任した。「マジカル頭脳パワー!!」「THE夜もヒッパレ」「「スーパーJOCKEY」「24時間テレビ」などヒット番組をプロデュースした。 現在は「情報経営イノベーション専門職大学」客員教授。映像会社「2501」顧問。
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