この総選挙 最重要争点は「平和を守れるか」だ!台中緊張でいよいよ近づいてきた戦争の足音――ほか7編

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   この連載もきょう29日(2021年10月)が最終回です。「テレビウォッチ」ページを見ると第1回は2008年10月となっている。13年間もの長きにわたり、ご愛読いただきましたこと感謝申し上げます。

   先週末、所用があって広島へ行ってきた。昔、取材では何度か訪ねているが、いつもとんぼ返りだったので、今回は、念願だった原爆ドームと平和記念資料館へ月曜日に行ってきた。原爆ドームと死没者慰霊碑で手を合わせ、資料館に展示されている幼くして亡くなった者たちの遺した言葉に涙した。

   前日、被爆者で長年核廃絶を訴え続けてきた坪井直さん(享年96)が亡くなっていたことを、後で知った。2016年5月に広島を訪れたオバマ大統領と会って、核のない世界の実現に取り組むよう進言し、固い握手を交わした姿が世界中に流れた。

   私は敗戦後の11月に生まれ、戦後と共に生きてきた。大災害は何度かあったし、今回のコロナ禍もあるが、幸い、私の祖父母や両親のように戦渦に巻き込まれることはなかった。私は、平和憲法のおかげだと思っている。週刊現代編集長だった最後の号で、「1万人アンケート『日本国憲法を改正すべきではない』が過半数」(1997年11月15日号)という大特集を組み、新聞広告のリードも自分で書いた。

   だが、当時より戦争の足音はより近くなっていると思わざるを得ない。ダラダラ続いた安倍政権時代に、憲法を蔑ろにして集団的自衛権を認める愚を犯し、戦争のできる普通の国へと大きく舵を切った。アメリカの日本属国化はますます進み、台湾有事の際はアメリカと組んで中国と対峙することまで約してしまった。

   けさの朝日新聞(10月29日付)は、台湾の蔡英文総統が公に米軍の駐留を認めたと報じている。一触即発といってもいい事態なのに、衆院選の各党の公約の中に危機感は感じられない。反対に、「激変する安全保障環境に対応するため、防衛力も強化する」(自民党)、「防衛費のGDP比1%枠を撤廃」(日本維新の会)と、防衛力を増強すれば抑止力が高まり平和を保てると勘違いしている。

   戦争はまごうことなく愚かな人間たちが起こす人災である。残念なことに、この国は、愚かな政治家が増えてきていると思えてならない。社会保障も経済再建も大事だが、戦争を二度と起こさないと誓うことの大事さに比べれば比較にならないはずだ。31日の投票日、私は戦争につながる安保法制の廃止や沖縄基地の返還を強く求めている政党に一票を入れるつもりだ。この連載は終わっても、微力ではあるが、平和を危うくする勢力への批判は死ぬまで続ける。ありがとうございました。

選挙のプロの直前予想「自民大幅減、立民微増、維新倍増」あの杉田水脈は安泰ってどういうこと?

   本題に入ろう。衆院選だが、週刊誌も新聞も、静岡の参院補選で自民党候補が敗れたことと、野党共闘が213選挙区でできたため、予測が難しくなっているようだ。今週はサンデー毎日と週刊文春が予測をしている。サン毎は選挙プランナーの三浦博史が、野党候補の追い上げ急で、自民党が24議席減、野党が25議席増と見ているが、自民党は単独過半数は確保するとしている。ここでも日本維新の会が11議席から26議席へ躍進すると見ている。

   文春はどうか。こちらは各党・各紙が取りまとめた選挙区別の情勢調査を入手して、さらに選対関係者への取材や独自の現地調査などを踏まえて「最終当落」を徹底予測したと力が入っている。その結果、自民党は現有議席から45減らして231議席にまで落ち込むと見る。

   立憲民主党は27議席増やして137議席、やはり伸びが著しいのは日本維新で、18議席増やして28議席を獲得すると見ている。こうして各誌の予測を見てみると、自民党は24議席から45議席まで幅はあるが、かなり減らすことは間違いないようだ。

   私は、朝日新聞(10月28日付)が報じた「アベノマスクが約8300万枚も倉庫に残っていた」という記事は、結構インパクトがあったと思う。3割近い約115億1000万円相当で、その保管費用だけで昨年8月から今年3月までで約6億円に上るというのである。税金の無駄遣いだと言うのも虚しいが、私を含めて、これを読んだ読者は怒髪天を衝いたはずだ。こういうわかりやすいことが、ボディブローとして効いてくるのだ。

   週刊新潮は、石原軍団が解散してしまったために、今回は舘ひろしや神田正輝などの応援がないため、石原伸晃が厳しい選挙をやっていると報じている。甘利明幹事長が"ご執心"でゴリ押しした、大分1区から立候補した高橋舞子候補(33)の評判が悪く、甘利が応援に駆け付けたが聴衆は少なく、自身の不人気を印象付けてしまったと新潮が報じている。

   杉田水脈という自民党の候補がいる。「 LGBTの人たちは『生産性』がない」と発言して物議をかもした、あの女性だ。今回は落選決定だと思っていたら、そうではないと新潮が伝えている。安倍前総理が子飼いの杉田を比例中国ブロックで上位にするよう、遠藤選対委員長に自ら電話したというのだ。どうやら総裁選のとき、高市早苗陣営の筆頭として働いたことへの論功行賞らしい。安倍らしいといえばいえるが、呆れた話である。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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