北朝鮮の国営テレビ「朝鮮中央テレビ」がきのう16日(2021年9月)、弾道ミサイルの発射実験の映像を公開した。山林を走る貨物列車が停車すると、兵士たちが次々と降りていく。続いて貨物列車の屋根がゆっくりと開き、緑色のミサイルが現れ、白煙と共にミサイルが発射された。このシーンの撮影にはドローンを含め5台以上のカメラが使用されていることがわかる。さらに、1発目の発射後に、列車の反対側の屋根が開き、もう1つのミサイルが現れ、これも発射された。この2発の「鉄道機動ミサイル」が発射される映像は約2分間。
中国とロシアの後ろ盾「ミサイル開発しやすくなっている」
朝鮮中央テレビは「新しく組織された鉄道機動ミサイル連隊の戦闘準備態勢と任務遂行力を評価し、作戦行動を熟練させるために行われた」と報道。ミサイルの飛距離は約800キロで、日本海の日本の排他的経済水域(EEZ)内の標的に正確に命中したとも報じられた。北朝鮮がミサイルの発射映像を公開するのは2017年以来、約4年ぶりのことだった。
軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏は「鉄道から発射するのは北朝鮮で初めてのスタイル。世界中の北朝鮮ウォッチャーが誰も予想していなかったことなので驚き」と語ったうえで、「北朝鮮は全国に鉄道網があるため全国どこからでも、すぐ発射できる。これが日本に届くようになるとミサイル防衛も非常に苦しくなる」と指摘した。
さらに黒井氏は列車から発射することについて、「ミサイル発射のバリエーションを増やしたことで、敵が的を絞りにくくなる」と語り、発射された「KN23北朝鮮版イスカンデル改良型」ミサイルについて「変則的な軌道のため落下地点の予測が困難、低い高度で移行するためイージス艦では迎撃できず、PAC3で対応するしかない」と解説。つまり北朝鮮は、射程距離は約800キロ(従来600キロ)で、イージス艦で迎撃できないミサイルが日本列島を射程に収めたことになる。
北朝鮮は先週末にも巡航ミサイルの発射実験をしたと発表しており、黒井氏は「中国とロシアが後ろ盾になり、国連安保理で厳しい制裁ができなくなっているので、北朝鮮がミサイルの開発や実験をしやすくなっている」と指摘した。
玉川徹「PAC3がいくらあっても迎撃漏れがでてしまう」
スポーツキャスターの長嶋一茂は「北朝鮮の経済逼迫は冬にかけてさらに進む。日本では総裁選に注目が集まる中、北朝鮮にも注目しろというアピールなのかも」とコメント。
バイオリニストの廣津留すみれは「北朝鮮のミサイル発射のニュースが入ってくると、"またか"と慣れてしまっている部分があるが、これは射程距離も広く新たな脅威になる」と話した。
テレビ朝日コメンテーターの玉川徹は「なぜ貨物列車かというと偽装だからです。これまではトンネルの中に隠して打つ時に外に出していた。貨物列車から発射されると、見た目ではどれがミサイルを搭載している列車かわからなくなる。先制攻撃ができない日本は、この情報をどうやって察知するのか。衛星などで監視できて兆候を捉えたとして、攻撃したがミサイル列車ではなかったとなると、これは戦争を仕掛けたことになり、大手を振って核を使われることにもつながりかねない」
長嶋一茂が続けて「PAC3は日本に28基あるそうですが、射程距離は数十キロしかなく、全国に散らばっている。射程内にすべてを集められないので、万が一攻撃されたらふせげないですよ」と指摘すると、司会の羽鳥慎一は「黒井さんによると、迎撃はできるが範囲が狭いので守れないそうです」とコメント。
玉川が「同時にミサイルを撃つ"飽和攻撃"をされたら、PAC3がいくらあっても迎撃漏れがでてしまう」と言うと、羽鳥は「発見するのも、対策も困難になったということです。大きな問題です」とまとめた。
(バルバス)