きょう31日(日本時間、2021年8月)、米国国防総省は「米国大使を乗せた最後の輸送機がカブールを飛び立った。米国軍の撤退は完了」と発表。30日にはテロ組織「イスラム国・ホラサン州」が空港に6発のロケット弾を撃ち込んだと犯行声明を出すなど、カブール空港周辺は銃声が鳴り響いている。そんななか、カブールに残る日本人は退避が難航している。加藤勝信官房長官は「まだ邦人が残っている」と発言。タリバン新政権下、残された日本人と協力者の今後はどうなるのか。「モーニングショー」が詳報した。
バス十数台で空港に向かおうとした矢先に爆破テロ
これまでの経緯を見ると、8月15日にタリバンがカブールを制圧すると、日本大使館員12人は17日にアラブ首長国連邦(UAE)に脱出。退避希望者が自力で空港に移動するのが困難になったため移動用バスが用意されたのが24日、25日には自衛隊機が空港に到着した。しかし、26日に空港で大規模なテロがあり、退避は中止に。27日に日本人1人が自衛隊機でパキスタンに移送されただけに終わっている。
そのたった1人の退避者は共同通信の通信員をしている安井浩美さん。カブールに在住しており、26日夕方に大使館のアフガニスタン職員と家族など数百人とともに集合し、政府が用意したバス十数台で空港に向かおうとした矢先に爆破テロが起きた。退避は中止となったが、安井さんはカタール政府の車で外国人記者と移動し空港に到着、自衛隊機でパキスタンに退避できた。安井さんは「多くのアフガニスタン人協力者が退避できずに残っていると思うとつらい」とコメントしているという。
安井さんとSNSを通じて連絡を取ったというジャーナリストの常岡浩介氏は、「安井さんは帰国せず、パキスタンからこの問題を見続けると言っていました。どんな場所でも切り抜けてきた人で、かつてタリバンから殴打されたことがあるのですが、殴打された瞬間反撃して、相手を3発殴り返したというタフな人」と言う。
自衛隊法の規定との関係も
テレビ朝日コメンテーターの玉川徹は「現地にいる日本に協力したアフガニスタンの人たちがほぼ避難できず残される。そういう人たちをなぜ有効に避難させられなかったのか」と怒る。
各国の退避状況をみると、米国は12万2000人以上が退避、英国は約1万5000人、ドイツが5347人、フランス約3000人、韓国390人に対し、日本人は1人だけ。
自衛隊法84条の4では「外国における災害騒乱など緊急事態に際して保護を要する邦人等の輸送において、安全に実施することができると認めるときは輸送を行うことができる」とされており、安全が確保されない市内での活動ができなかったこともネックとなった。
常岡氏は「自衛隊が動けないなら民間機を使えばいいのではないか。自衛隊の存在理由がわからなくなっている。初動が遅れたのは外務省も認めている。最初に大使館員の退避を優先したのは他国の例からすると目的がおかしくなっている。大使館員は邦人保護、外交が目的でいたのにそれを放り出して先に出たのは本来の目的を見失っている」と指摘。
事実、24日に退避行動を開始した韓国の大使館員は、25日にアフガンに戻り米国と交渉し、移送バスを確保して390人を退避させている。
常岡氏は「しかし、日本の大使館員は戻らなかった。これが明暗を分けた」として、「最初に大使館員が逃げることだけを考えてしまったことが初動の遅れになったと思う。英国もフランスも大使は退避しなかった。空港内で大使館業務を継続してアフガニスタンの人たちにビザを書き続け、たくさんのアフガニスタン人を救った。今回日本は全くそれをやれなかった。まだ邦人が残っている中、大使館員は残るべきだったと思う」と伝えた。
玉川は「かつては杉浦千畝という外交官の理想形と言われた人がいた。それと比べると寂しいこと」とコメントした。
(バルバス)