中国では「電気自動車(EV)の墓場」が各地に出現している。開発急拡大のただなかに、なぜ? 中国のEV開発の現状を上海支局からの報告として31日(2021年8月)の「あさチャン!」が伝えた。
中国・浙江省嘉興市。上海から車で2時間ほどの町の空き地に、1000台ほどのEVが放置されていた。一部の車は、バンパーやボンネットがはずれ、作業員が部品を外しながら解体作業をしていた。作業員は「数カ月前に、ここに運ばれてきた」。上海などでカーシェア用に使われていた車だ。白い車体に緑のロゴ「EVCARD」が見える。セダンタイプやSUV(スポーツ車)などもあり、最も小さい車で、1分約10円で利用可能だった。
「進化」が早すぎて...
上海市内の駅など4000カ所に駐車場があり、約8000台が配置されていたが、2019年に撤退、カーシェアの車は姿を消した。タクシーをスマホのアプリですぐ呼べるようになり、運賃も安かったため、カーシェアは広がらなかった。
市民に聞くと、「タクシーの方が便利。カーシェアは使った後で、指定の駐車場に返さないといけないので、時間が無駄になる」。「1、2回カーシェアを使ったが、駐車場が少なかった」。
MCの夏目三久「カーシェアとして利用されていたEV車を、中古車として再利用できないのでしょうか」
上海支局の森岡紀人・特派員「早すぎるEVの進化が中古車としての利用を難しくしています」。
世界一の493万台のEVを保有する中国では、毎年のように新たなEVが開発され、とくにバッテリー性能は飛躍的に向上しているため、中古車としては使えないのが現状だ。
「EVの墓場」が出現する背景には、世界のEV市場での主導権を握る、という中国政府の思惑もある。カーシェア各社への多額の補助金で増えた膨大な数のEVが、結果として行き場がなくなったのだ。
「自動車強国を目指す方針は当面続くことから、今後も中国各地で、EVの墓場が出現するかもしれません」。森岡記者はそう予想する。
(栄)