『AKIRA』の赤いバイクが走り込んでくるはずだった五輪開会式!『演出責任者』変更でボツに――ほか5編

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   物悲しい雰囲気が漂った東京五輪開会式で、唯一、私が感動したシーンは、長嶋茂雄(85)が王貞治、松井秀喜と聖火ランナーとして現れたときだった。長嶋もこの日を楽しみに、昨年秋(2020年)から過酷なリハビリに取り組んでいたそうだ。足取りはおぼつかないが、左手でトーチを掲げる立姿は現役時代の彼を彷彿とさせるほどカッコよかった。

   亡くなった長嶋の妻は、前回の東京五輪のコンパニオンだった。美しい人だった。プロ野球史上に燦然と輝く巨人軍の9連覇は翌年から始まった。

   長嶋の次に被災地の子どもたち6人が走り、テニスの大坂なおみが聖火台に点火した。1199ページにもなる開会式の台本を入手した週刊文春によれば、長嶋たち3人が「最終聖火ランナー」に予定されていたそうだが、「女性蔑視発言」で森喜朗が辞任すると、IOCが掲げる「多様性と調和」を体現する存在として大坂に白羽の矢が立ち、本人に打診したのは3月だったという。

   バッハIOC会長の13分もの長ったらしいあいさつに参加者は呆れ、疲れ、白けていた。深夜に近い11時15分に天皇が開会宣言をしたが、菅首相は座ったままで、同席していた小池都知事に促されてあわてて立ち上がった。高齢で疲れていたとしても、礼を失すると、自民党幹部が嘆いていたと文春が報じている。事前に伝えられていた通り、宣言の中に「祝う」という言葉はなく、「記念する」に変更されていた。

   最初の台本では、セレモニーは新国立競技場に大友克洋の漫画『AKIRA』の主人公の愛車・赤いバイクが颯爽と走ってくるシーンで幕を開け、ステージには『Perfume』の3人が登場するというものだったそうだ。だが、演出振付師のMIKIKOは、五輪事業を仕切ってきた電通の代表取締役である高田佳夫らに"排除"され、高田と同期でCMクリエイターの佐々木宏が後釜になる。その佐々木は、タレントの渡辺直美を侮辱する演出プランを出していたことが発覚して辞任。開会式直前に、式の作曲を担当していた小山田圭吾の「障がい者イジメ」が明るみに出て辞任に追い込まれた。

   さらに、ショーディレクターを務める元お笑い芸人・小林賢太郎の「ユダヤ人差別発言」が報じられ解任と、まさに"呪われた"としかいいようがない惨状で、組織委の中からも「開会式は中止すべきだ」という声が上がったというのである。

   週刊文春は、竹中直人も出るはずだったが、小林が解任された日に、竹中も辞任を申し出ていたそうだ。1985年に竹中は『放送禁止テレビ』というオリジナルビデオを出していて、その中で障がい者を揶揄するようなコントを演じていたため、竹中が組織委に連絡して辞退したそうである。

「復興五輪」にNG出したIOC 「世界で困っているのは東北だけではない」じゃあ、なんで日本でやるのか

   当初、復興五輪といわれたが、週刊文春によれば、これを潰したのはIOCだという。「世界で困っているのは、東北だけではない。特定の震災を限定的に取り上げるのはダメ」と演出側に伝えていたそうだ。なぜ、安倍前首相はこれに抗議しなかったのだろう。

   その代わり、もはやこの手の祭典では陳腐になってしまっている『Imagine』を強くリクエストしてきたという。バッハ会長に代表される"ぼったくり"集団といわれるIOCが、『Imagine』を流すことを求めたというのは、ブラックジョークとしか思えない。

   「なぜ今東京五輪なのか」。この疑問に正面から答えない菅政権だが、始まれば菅首相の思惑通り、NHKを始めとするテレビ局は五輪一色になり、国民も金だ銀だと浮かれ調子である。でも、忘れてはいけない。この五輪は国民の多くが望んだものではないことを。ニューズウイーク日本版で李ナオルは、東京五輪を開催する意義の一つは、「日本の市民の反対運動によって五輪の意味を世界に改めて問い直したことだ」といっている。

   私は五輪中継を見ないが、夜はNetflixやAmazonプライム、ツタヤで借りた映画やドラマを観ているから飽くことがない。作家や評論家たちがコロナ禍の日々を日記風に描いた『パンデミック日記』(新潮社)の中でも、多くの人がこの機会にNetflixを見始めたという記述が多くある。私はAmazonプライムもよく観るが、特に古い映画が観られるのが嬉しい。先日も芦川いづみの出ている『しあわせはどこに』(1956年)を観て、芦川の美しさにしびれた。小栗康平の『泥の河』(1981年)はNetflixで観ることができる。

   唯一残念なのがNHKBSで、エンゼルス大谷翔平の中継が観られないことである。大谷はきょう29日も37号打ったってよ。

柔道・阿部一二三と詩の金メダルはく奪!?母親と抱き合って喜んだら「プレーブック」違反だって

   ネットニュースによると、金が確実視されていたバドミントンの桃田賢斗やテニスの大坂なおみが敗退し、競泳の瀬戸大也も振は不倫報道の後遺症らしい。

   そんな中、卓球の混合ダブルスで日本初の金メダルを獲った水谷隼・伊藤美誠ペアと、個人メドレー400と200で優勝した大橋悠依は素晴らしい。文春によると、大橋は滋賀県彦根市出身で3人姉妹の末っ子。25歳。小3から高3まで地元のスイミングスクールで泳いでいたというが、「控え目で一歩引くタイプ」(スクールで指導した奥谷直史)。

   ここへ来るまでは苦難の連続で、膝の脱臼や極度の貧血に苦しみ、大学2年の日本選手権では200メートル個人メドレーで40人中40位になり、もう競泳をやめようと思ったという。今期も不調が続き、シーズンベストは自己ベストから5秒も遅かったそうだ。ポジティブではなく繊細と自称している彼女が、大舞台で大仕事をするとは、だから勝負事は面白い。嵐とスノーマンが大好きだそうだ。

   反対に心配なのは、兄妹で柔道金メダルを獲った阿部一二三と阿部詩だと週刊新潮が報じている。金メダルをはく奪されてしまうかもしれないというのだ。喜びの会見に兄妹の長兄と両親が応じたのだが、そこで、一二三が父に、詩が母にそれぞれのメダルをかけ、母親は「抱きしめてくれたので、最高にうれしかったです」と答えた。

   普段なら何でもない親と子の交歓なのだが、五輪期間中は家族でも接触が禁止されていると全日本柔道連盟から注意があり、メディアには家族と接触したことが分かる発言部分はNGにしてくれと阿部の事務所から電話があったというのである。規則なのは分かるが、これで万が一金メダルをはく奪されたら、日本中が怒るぞ!

西浦博・京大大学院教授「8月に東京のコロナ感染者5235人。パラリンピック中止もあり得る」

   東京の感染者が3000人を超えた。東京都は7月29日にモニタリング会議を開き、このままいけば8月11日に1日あたりの新規感染者が4532人になるという試算を公表した。西浦博・京都大学大学院教授によれば、「パラリンピックの開催直前には5235人になり、パラ中止もあり得る」と週刊文春で話している。

   東京都は約6000床の病床を確保しているというが、西浦にいわせれば、「一般病床は二千六百ほどで、既にこの病床数は超えてしまいました。これからは入院調整中の患者や、自宅療養者が爆発的に増えていくことになります」。東京都は特定機能病院などに、手術の延期や一部の診療科の停止などを検討するように求めているが、このままいけば「命の選別」がもっと苛烈に行われるようになるのではないか。

   人の流れが減らない、罰金を払っても酒を提供する店が減らないのは、<「五輪強行に代表される社会の不条理への反発など、複雑な思いを抱える方が増えてきている」(西浦教授)>からである。五輪は開催するが、運動会は中止せよ。酒は外で呑むな、家にいろといわれても、そりゃ聞こえませぬ伝兵衛さんである。

   だが、週刊新潮は、「8割"狼"おじさん」は怖がらせるのがお仕事と揶揄する。感染者が増えても、死亡する人が増えなければさほど心配することはないというのだが、感染者が増えていけば必然的に発症する人も増える。そうなれば病床は逼迫し、医療崩壊することは間違いない。

   新潮のいい分で納得できることもある。新型コロナウイルスによる子どもの死亡率は極めてまれで、200万人に1人といわれているそうだ。そうならば、今からでも東京五輪を子どもたちだけに限定して、自国で開催されている生五輪を観るという貴重な体験をさせてあげようというのである。賛成だが、そんな勇気は、菅首相にも小池都知事にもあるはずはない。

やっぱりコロナワクチンに深刻副反応!高割合で「心筋炎」「心臓炎」

   ワクチン接種は予定より大幅に遅れているが、接種後にコロナに感染して重篤になるケースが増えているという恐ろしい話が週刊新潮に載っている。中日ドラゴンズの木下雄介投手(27)は、7月上旬にワクチン接種をした後、突然意識を失ってしまったという。<「まず心臓周辺に問題が発生し、その影響が脳に及んでいます。人工呼吸器を外すこともできません」(さる球団関係者)>。主治医はワクチンが体調急変の原因だったのではと睨んでいるそうだ。

   7月には、楽天の田中将大投手が、ワクチンの副反応による体調不良を理由に、オールスターゲームを休場している。厚生労働省健康局健康課予防接種室は、「モデルナやファイザーといったmRNAタイプのワクチンを接種後、全世界的に、偶然に生じたとは言い難い、ある副反応の傾向が確認されているのは事実です。すなわち接種後に心筋炎や心臓炎にかかる割合が、一般的な発生頻度と比べて高い。とくに若い男性に関してはワクチン接種との因果関係が疑われています」。現時点では証明がなされているわけではないが、各国の保健当局は注視しているというのだ。

   一部の報道で、若者の2割ぐらいがワクチン接種を受けたくないと考えているそうだ。新潮は<木下投手の事例も踏まえ、改めて大事だと思われるのは強制ではなく、最後は本人の自由意志に委ねられるべきであろう>といっている。批判ではないが、新潮でさえ、コロナに対して、ワクチン接種対しての考え方が「揺れ」ているように思う。何が何でも東京五輪開催へ舵を切った菅首相は、国民みんなが感じている、悩んでいる、この揺れに答える責任がある。(文中敬称略)

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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