<テレビで読む グルメ・食事> 7月25日(2021年)放送の「情熱大陸」(TBS系)では、28日の土用の丑の日を前に、福岡県北九州市小倉北区の鰻料理店「田舎庵」3代目店主・緒方弘さんを取り上げた。食べた客は「身がふわっふわ」「皮がパリッパリ」と口をそろえ、全国を食べ歩いたという鰻好きも「日本一うまい」と絶賛する名店だ。
今や「鰻の神様」とも言われる緒方さんだが、大学卒業後は大手百貨店で海外ブランド誘致を担当し、ニューヨーク暮らしも経験。30歳を目前に体調を崩した父親の後を継ぎ、職人としての出遅れをカバーするために様々な試行錯誤を重ねた。
「鰻に火をいっぱい食べさせる」
「秘伝のタレなんてウソです」「鰻料理も科学」と言い切る緒方さんがたどり着いたのが「鰻は炭になる直前が一番おいしい」との結論。そして、「鰻に火をいっぱい食べさせる」という独特の技法を編み出した。
まず、通常よりも多い14~16本の金串を打った鰻の身を焼きながら2つ3つに折りたたみ、身と身をパタパタと何度も叩きつける。こうすることで皮や身に無数の裂け目ができて火が通りやすくなり、皮に含まれるゼラチン質や余分な脂が溶け落ちる。すると、口に入れたときに、まずはパリパリとした皮の香ばしさを感じ、その後から滋味が広がるのだそうだ。
もう1つの驚きの技法が、焼きの途中で「水をかける」こと。緒方さんによれば「焦げたところに水をかけて温度を落とし、全体の温度を均等にすることで、身の薄いところもふっくらと仕上がる」という。緒方さんの評判を聞いて見学にきた他店の料理人は「衝撃的です。焼き物に水をかけるなんタブーですからね」と目を丸くしていた。
養殖物が99%以上を占める日本の鰻料理の行く末を案じる緒方さんがいま取り組んでいるのが、天然物に負けない鰻の養殖技術の開発だ。74歳になった今も各地の養鰻業者を回っては「天然に近い環境で、もっとおいしい養殖鰻を育てよう」と訴える。
(寒山)