東京五輪の水泳女子400メートル個人メドレーでは、初出場の大橋悠依選手(25)が金メダルに輝いたが、ここに至るまでの紆余曲折の道のりを、26日(2021年7月)のスッキリが取り上げ、元五輪銀メダルの松田丈志氏が解説した。
「バケットターン」に注目
大橋選手は、6歳で水泳を始めた。19歳で出場した日本選手権では40人中最下位。しかし、2年後の世界選手権では銀メダルに輝いた。「遅咲きのヒロイン」と呼ばれた。
去年1月の「スッキリ」では、松田氏の取材に対し、大橋選手は「ターン際で離されることが多いので、そこは練習でも意識します」。なぜ「ターン」がポイントなのか。
400メートル個人メドレーではターンが7回もある。大橋選手は50メートルプールを横向きに使ってターンの回数を増やして練習した。当時の番組で大橋選手は、「(ターンの練習をコーチに)やられているので、しょぼんとなっちゃった。いまに見てろよ」。
メドレー決勝で大橋選手は、最初のバタフライでは3位と出遅れたが、2つ目の背泳ぎでは2位に進出。ここで200メートルのターンをした直後に、するするッと1位に浮上。そのまま各選手に差をつけて、最後の自由形で差を詰められながらも逃げ切った。松田氏はこの200のターンで大橋選手が見せた「バケットターン」に注目した。
水泳やスケートボード男子、サッカー、卓球...
背泳ぎのターンはふつう上向きのままタッチするが、バケットターンは、タッチする直前に身体をひねって下向きになり反転してターンする。松田氏によると、「呼吸しないままターンするので苦しいが、スピードは出る」。200メートル個人メドレーでやる選手は多いが、400だと、しかも女性では少ない、という。
一方で、大橋選手は、「夜に予選をして朝に決勝」をするなかで「3秒」記録をあげたという。松田氏によると、「ふつう人間は夜の方が、身体が動くので、朝になると記録は落ちる。(五輪の)決勝は朝に行われることが多いが、大橋選手は前日夜の予選で余裕を持って泳いで、朝の決勝で記録を縮めた。他の選手はそうはできなかった」。
番組はこの後も、スケートボード男子や卓球、サッカーなど五輪一色だった。開会式に合わせて日本政府がセットした4連休中も増え続ける、新型コロナウイルスの感染者に触れる場面はなかった。ただ、例えば、朝日新聞はサッカーの熱戦が展開される横浜のスタジアムのわきの大会指定病院で、大会関係者の救急要請がいつ来るか、緊張する医師らの表情を伝えた。「普通ではない五輪」の現状を、忘れずに伝えたい。
(栄)