東京五輪の柔道で兄妹そろって金メダルをとった阿部一二三(23)、詩(21)選手の「強さの背景」を元日本代表監督・シドニー五輪銀メダリストの篠原信一氏が解説した。26日(2021年7月)のスッキリが伝えた。
兄は6歳、妹は5歳で柔道を始める
先に畳に上がった詩選手が延長戦の末、フランスの選手を抑え込んで一本勝ち。続いて兄の一二三選手も、やはり延長戦に突入したが、大外刈りで技ありを奪って勝利した。実況中継は、勝ってなお畳の上では表情を変えない兄とは対照的に、飛び上がって喜ぶ妹の姿を映しながら、「やっぱり、お兄ちゃんも強かった」。
兄が柔道を始めたのは6歳。「昔は、自分はすごく弱くて泣き虫」。「女の子に負けて悔しくて、そこからは絶対上を目指そうって」。妹は5歳で柔道を始め、「昔から負けず嫌いな性格だったので、お兄ちゃんが強くなっていくのに、負けたくないところがあった」。
兄は中学時代に全国大会で2連覇。高校生では国際大会で優勝した。妹は中学3年生でシニアの大会に出場し、頭角を現した。「私はお兄ちゃんがいなかったら、今の自分は絶対にないと思っている。すごい感謝も尊敬もしています。いつでも引っ張ってくれる存在というか。こういう風になりたいと思わせてくれたのはお兄ちゃんだった」。
2018年の世界選手権では、日本勢史上初の兄妹優勝を果たした。
父親の浩二さんは試合後、一二三選手に「最高の出来やった」とお祝いの言葉をかけた。母親の愛さんは、「抱きしめてくれたんで、最高にうれしかったです」。兄の勇一朗さんも「感無量でした」。
篠原信一・元監督「素晴らしい対応をされた」」
篠原元監督は、一二三選手について「両袖を持って投げる」技が強さの秘密だという。通常の形では、釣り手で襟を持ち、引手で袖を持つが、相手が警戒してその形を作らせてくれない。一二三選手は両袖を持って大外刈りなどを仕掛けるのが得意だという。
また「ゴールデンスコア」という延長戦(4分間の本戦以降は、技あり以上のポイントで勝敗が決定)の方式について、篠原元監督は「日本人にはいいルール。時間がながくなると、外国人はバテてくる傾向がある」という。日本の場合は、組んで練習する時間が1時間か1時間半ほど続くが、外国は5分やったら休憩、を繰り返す場合が多い、という。詩選手の決勝の延長戦は、8分27秒で決着がついた。
さらに篠原元監督は、「今回コロナ禍で(五輪が)開催されなかったかもしれない中で、みなさんの努力で開催されたことへの感謝をこめて、二人は素晴らしい対応をされた」として、兄妹の記者会見などの対応にコロナ禍への配慮が見えた点を指摘した。
(栄)