「経産省詐欺官僚」金銭トラブル常習だった!ウソ投資話・借金踏み倒し...役所は身上調査したのか?――ほか3編

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   経済産業省の現役官僚である櫻井眞(産業資金課係長・28)と新井雄太郎(産業組織課・28)が「家賃支援給付金」を騙し取ったとして逮捕された事件は、新型コロナウイルスのまん延で苦しんでいる多くの人たちを激怒させたに違いない。

   週刊文春によれば、2人の苗字の新と櫻をとったペーパーカンパニーを2019年11月に設立していて、そこが昨年(2020年)12月頃、虚偽の賃貸契約書を使って中小企業庁に家賃支援給付金を申請して、550万円を詐取したといわれる。給付金制度を熟知したキャリア官僚が、中小企業支援のための制度を使って私腹を肥やそうとしたというのだから、万死に値する犯罪だと、私には思える。

   なかでも櫻井は、慶応義塾高校時代から"投資のプロ"を自任し、慶応大学時代には友人たちに「儲かる銘柄がある」と投資を勧め、揉め事が絶えなかったという。卒業後にみずほ銀行に就職したが、あちこちに投資話を持ち掛け、2000万円も損した人もいたそうである。大学時代に櫻井と知り合った人間は、「銀行内部でしかわからない情報があるから、カネを貸してほしい」と頼まれ500万円を貸したが、その後、音沙汰がなく、調べてみるとみずほ銀行を辞めていたそうで、泣き寝入りしたという。

   櫻井という人間は見栄っ張りで、高いレストランに出入りし、どこぞの御曹司たちと夜な夜な飲み歩き、麻布十番のタワマンに女を引っ張り込んでいたそうである。ワル知恵だけではなく、地頭もよかったようだ。退職して1年間公務員試験の勉強をしてパスした後、2018年に経産省に入省している。経産省は、なぜみずほを辞めたのか、金銭トラブルはないのか、身上調査をしなかったのだろうか。

   その2年後に、高校で同じゴルフ部にいた新井が入省してくる。新井は三度目に東京大に合格し、卒業後に東大のロースクールに進学して司法試験に合格した後、経産省へ入っていて、法律の知識が生かせるコーポレートガバナンスや会社法に関する業務を行っていた。詐欺師と法律のプロが組んで国のカネを奪おうというのだから、赤子の手をひねるように、容易いことだっただろう。

   それなのになぜ上手の手から水が漏れたのか。警視庁は今回のことだけではなく、別の詐欺事件にも彼らが関与していたのではないかと見て、捜査を進めているという。この事件、さらに広がる気配を見せているが、経産省は隠し立てすることなく、身内の大恥をすべてさらけ出さなければ、国民が許さない。

書かれざる立花隆史―文藝春秋は「田中角栄研究」号増刷せず、単行本も別出版社!角栄側と話し合った?

   "知の巨人"といわれた立花隆の追悼特集を週刊文春が巻頭で、週刊現代も「別れの流儀」のなかでやっている。立花といえば、文藝春秋(1974年11月号)に書いた「田中角栄研究―その金脈と人脈」が最も有名だ。これが今でも「調査報道の金字塔」といわれるのは、すでに公になっている政治資金報告書、報道された新聞、雑誌記事、大蔵省発行の「財政金融統計月報」、国会の議事録を取材記者たちに集めさせ、それを読み込んで田中の裏金づくりの手法を浮かび上がらせたからである。

   週刊文春で、週刊朝日で「田中新金脈研究」を立花とともにやった蜷川真夫がこういっている。「よく『当時の新聞記者はあの程度の事はみんな知っていたけど書かなかったんだ』と言われるじゃないですか。あれは間違いです。(中略)一つずつファクトを詰めて検証する作業をやった人は立花さん以外にいなかった」

   立花の取材の基本は、「その人が書いているものは最低でもぜんぶ読んでいく」ことだった。文春には、ノーベル生理学・医学賞を受賞した利根川進にインタビューしたときのことが書かれている。利根川が「たしか何かの論文で」というと、「先生がおっしゃる論文は××ですか」と英語の論文をさっと挙げる。利根川はワシのあの論文も読んでいるのかと驚き、立花に心を開き手の内を明かしてくれたそうだ。

   未知のことを知りたいという彼の真骨頂は、2007年に自身ががんを宣告されたときだった。旧知のNHKディレクターに電話をかけ、「キミ、撮りに来ないか」といった。落ちこんでいるかと思ったら、むしろ興奮していたというのである。

   私は、彼がゴールデン街で「ガルガンチュア立花」をやっていた時から知ってはいるが、気難しくて近寄りにくい人間だと思っていたので、一度も仕事をしたことはない。彼のほうも「このバカ編集者」と思っていたはずだ。彼の追悼を読みながら、書かれざる立花隆史があると思った。たしかに角栄研究はその後の調査報道に大きな影響を与えたが、当時の田中健五編集長は、この号が完売しても増刷をしなかった。これをまとめた単行本は、なぜか講談社から出版された。噂に過ぎないが、田中編集長が発売前に角栄側と話し合っていたともいわれている。

   立花がやはり文藝春秋で連載した「日本共産党の研究」も単行本は講談社であった。立花は元文藝春秋社員ということもあり、週刊誌ジャーナリズムの擁護者であった。週刊文春が田中真紀子の娘のことを取り上げたとき、田中がプライバシー侵害だと訴え、東京地裁が仮処分を決定した(後に取り下げられた)ことに怒りを覚え、一気に書いたという『「言論の自由」vs.「●●●」』(2004年・文藝春秋)の中に、こういう一節がある。

   <今の日本で誰が一番マックレイカー(堆肥をかき回す道具)の役割を果たしているかというと、新聞の社会部、テレビの社会派調査報道番組、週刊誌である。(中略)低俗であることは、言論の自由を問題にする場合、いかなる意味でも、いささかの制約要因にもならないし、なってはならないのである。いかなる言論もすべてが守られるべきである。問題はむしろ、個々の言論の表現方法、表現内容に不当性があるかどうかである>

   立花は東大でも講義をし、次の世代を育てようとした。だが一面、新しく出てきたノンフィクションの書き手にはやさしくなかったと、当時、立花と一緒に大宅ノンフィクション賞で選考委員をやっていた知人のライターに聞いたことがある。

   私が読んだ彼の本は、角栄研究を除けば『アメリカ性革命報告』(1984年・文藝春秋)だけしかない。遅まきながら、彼の何冊かの本を本棚から取り出して、立花隆という人間が後世に何を遺したのか、遺そうとしたのかを考えてみようと思っている。合掌。

止まらない雑誌販売部数減の中で...あの通販誌だけは空前絶後の一人勝ち!間もなく日本一になりそう

   出版物の部数を公査(監査)し、発表・認定している機構「日本ABC協会」の雑誌販売部数(2020年7~12月発売号)が出たので紹介しよう。『家の光』が1位で約46万部だが、2位の『ハルメク』がすごい伸びである。約37万部で前年同期比が122.42%。このままいくと1位もあり得る。通販雑誌でこの部数は空前絶後であろう。大出版社ではできないことを見事にやってのけた。

   3位が『週刊文春』だが、こちらは約27万部で同95.96%。いくらスクープを飛ばしても部数は減り続けているデジタルで儲かっているとはいえ、一抹の寂しさが漂う。新谷学が編集長に就いた文藝春秋も約20万部、同95.96%。売れるのは芥川賞の受賞作が載った号だけというのがやはり寂しい。

   私の古巣の週刊現代が、意外といっては失礼だが、頑張っている。といっても約20万部、同99.42%。かろうじて20万部を維持しているが、部数増への光は見えてきてはいない。遺言の書き方、いい死に方だけでは、現状の部数維持はできるが、それだけであろう。

   新聞社系の週刊誌の部数の少なさを高みの見物していた時代もあったが、しばらくするとそれに並ぶ部数になってしまうかもしれない。その兆しが週刊新潮と週刊ポストにある。ともに約16万部、新潮が同83.44%、ポストが同84.18%と大幅減である。見えているのは20万部ではなく10万部をいつ切るかということのようである。

   『週刊大衆』は新潮とポストの背中が見えてきた。約9万部で、同107.10%。『週刊プレイボーイ』が約8万部で同108.54%、『フライデー』も約8万部で同99.79%。『週刊朝日』が約6万部で同86.69%だから、もう一息で、朝日に並ぶかもしれない。月刊誌では『プレジデント』の落ち込みが目立つ。約11万部で同82.91%。誌面に菅首相の応援団執筆者が多くなったことが、嫌われている理由ではないのか。

   今回の特徴としては、コロナ禍で巣ごもりする機会が多くなったためか、『ザテレビジョン』『TVガイド』など、一時は部数減に歯止めがかからなかったテレビ誌にやや活気が出てきたことか。まあ、ハルメクの一人勝ちだが、他の大手出版社も手をこまねいていないで、何か考えるべきだと思う。

天皇陛下が菅首相に抱いた『危惧』安心・安全を言っているばかりで大丈夫か

   東京のコロナ感染の増加が止まらない。このままいけばまん延防止延長か再び緊急事態宣言の発令まであり得るのではないか。菅首相にとって聞きたくないニュースも、続々入ってきている。外国の選手団の中には参加を取りやめると発表したところも出てきているし、サッカー応援のためにロンドンを訪れていたスコットランドの1294人が、コロナに感染していたことが明らかになった。感染源は不明のようだ。

   観客を1万人にすると意気込む菅首相は、心臓が竦みあがる心地がしているはずだ。そのうえ、菅にとって腹立たしいのは、西村泰彦宮内庁長官を通じて伝えられた天皇の東京五輪憂慮発言である。週刊文春によれば、6月24日に行われた定例会見で、西村長官は緊張を隠せず、冒頭に述べる「お変わりなくお過ごしです」という文言を飛ばしてしまったという。

   「拝察しています」と一応、断ってはいるが、天皇の"真意"であることは間違いないようだ。同じ警察庁出身の大先輩、杉田和博官房副長官は、「西村はなぜ事前に言ってこないんだ」と憤ったという。西村は気に食わない前任者を任期前にすげ替え、官邸の意を汲む人物として送り込まれた人間なのだ。それがなぜ?

   どうやら、文春、新潮ともに、きっかけは6月22日に菅首相が行った「内奏」にあると見ている。<「内奏は五十分弱と決して長くはなく、首相は従来通り『安心・安全な大会を開催』と述べたといいます。その説明に、陛下は強い危惧を覚えられたのではないでしょうか」(宮内庁関係者)>(週刊文春)

   <内奏を終えた菅総理は周囲にこう漏らした。「陛下はコロナの感染状況をかなり心配されているようだった」>(週刊新潮)

   別の宮内庁関係者は文春で、西村長官は皇族方からも信頼が高く、実際には次長に就任した頃から官邸には情報を上げていないと語っている。たしかに、現憲法下で天皇が政治的な発言をすることは厳に戒められている。だが、コロナ感染が終息する気配を見せないなか、観客を入れて東京五輪を開催しようとしている菅政権に、西村長官の口を通していわねばならないほど、天皇の危機感が強いというのも事実であろう。

   菅首相は天皇発言を「なかったもの」にしようとしているようだが、多くの国民は、「お・も・て・な・し」もできず、触れ合うこともできない五輪などにもはや興味を失っている。新潮は、7月5日に新潮別冊「奇跡の『東京五輪』再び」を出すそうだから、五輪に反対などできるわけはないだろうが。(文中敬称略)

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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