<朝ドラ、今週の山場は?> 9日(2021年6月)の放送で、未知(蒔田彩珠)がやっているカキの地場採苗の研究を巡って、永浦家が揃って激昂するシーン。皆がそれぞれの立場で、家族や地域への愛情があるがゆえに意見がぶつかってしまう。ところが百音(清原果耶)だけが、何も言えずに取り残されてしまうという展開だった。
永浦家の家業であるカキの養殖は、他所で育ったカキ種を育てる手法。未知は、種ガキから作る地場採苗ができれば、海のトラブルでカキが無くなるリスクが減ると、真剣にカキ種づくりの研究をしていた。
百音が「月を見ながら涙」のワケ
しかし未知による判断ミスが起きる。「たかが高校生の自由研究だから仕方がないと」という龍己(藤竜也)に対し未知がキレた。地場採苗の可能性を信じて生半可な気持ちでやっているんじゃない。馬鹿にしないでよと。おりこうさんの理想論とはいえ、いつも冷静で優等生の未知が怒鳴るところは純粋すぎてホロロと感涙。
一方で、震災被害の借金完済に目途がついたばかりのいま、地場採苗をする金銭的な余裕はないと耕治(内野聖陽)が未知を言い聞かせようとするが、「返済が正義」だという銀行員は最低だと、怒りのまま噛みつく未知。熱血おやじが娘をひっぱたくか?と思ったら、怒鳴り飛ばしたのは母・亜哉子(鈴木京香)だった。家庭を守るという母の愛情と凄みがよく表れていた。
永浦家の空気は最悪。百音は台所から皆の様子を伺っているだけ。
家族みんなが、自分が取り組んでいる仕事や立場から、永浦家にとって最良な方法を真剣に語り、ぶつかり合いながらも、大いにディスカッションしているのだが、その中に終始、百音は入れなかった。
ドラマの最後に月を見ながら落涙する百音。自分のやるせなさ、虚しさの表れだ。しかし「人の役にたちたい」という漫然とした、モヤっとした気持ちが、やがて晴れて具現化するきっかけとなる出来事であったに違いない。
(Y・U)