隠れた名作になる予感 西島秀俊の料理姿が絵になる ドラマプレミア23「シェフは名探偵」(テレビ東京系)

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   テレビ東京の「ドラマプレミア23」は、前回の中村倫也主演「珈琲いかがでしょう」もよかったが、5月31日(2021年)にスタートしたこの「シェフは名探偵」もそれに匹敵する面白さ。まだ初回を見ただけだが、これは隠れた名作ドラマになる予感。

   原作は累計発行部数29万超の近藤史恵人気小説シリーズ「タルト・タタンの夢」「ヴァン・ショーをあなたに」「マカロンはマカロン」。主人公のシェフ・三舟忍が人並外れた洞察力と推理力で訪れた客の身に起こる事件や不可解出来事の謎を解くグルメミステリードラマで、小さなフレンチレストラン「ビストロ・パ・マル」が舞台。

  • テレビ東京の「シェフは名探偵」番組サイトより
    テレビ東京の「シェフは名探偵」番組サイトより
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「覚えてるんですか!」

   冷静沈着で穏やか、そしてお節介なシェフ三舟を演じるのは西島秀俊、料理姿が絵になる。スーシェフ(副料理長)志村洋二を神尾佑、ソムリエ金子ゆきを石井杏奈が演じる。

   ある日、その店をひとりの客が訪れる。その男は1年前、大口の契約を取り、同僚たちとこの店で祝った。会社をリストラされ、「最後の夜はこの店に来たかった」と来店。カウンターに座り、メニューを見ることなく、その時と同じメニューをオーダー。感慨にふけながら一口一口を大切そうに頬張り、料理を食べ終えたところで、シェフが「どうぞ、ヴァン・ショーです」と差し出し、男に声を掛ける。ヴァン・ショーとはホットワインのこと。「注文してないんで」と拒む男に、「また来てくださったんで」とシェフ。「覚えてるんですか!」と驚く男に、微笑みかける......。

   「そちらのテーブル、職場の方々とお越しでしたね。1年前のちょうど今頃」と。そして、回想シーンになり、「最高の夜でした。じゃあいただきます」とヴァン・ショーを口に含んだところで、「これからは第2の人生ですね」と。その言葉に驚き、むせながら「どうしてそれを」と訊ねると、胸元のスカーフをキュキュっとし、彼の服装や持ち物から、ここに至るまでのすべてを当ててしまうのだ。

   まだ、次の仕事は決まっていないという男に「じゃあうちで働きませんか。ギャルソンが辞めてちょうど困ってたんです」と声を掛け、手を差し出す。とまどいながらも握手する男。新人ギャルソンとなった男、高築智行を演じるのは濱田岳。ドラマの語り部でもある。

こんなお店があったら、行ってみたい

   こうして、4人となった「ビストロ・バ・マル」だが、驚くべきは、初回はここから2つの事件が起き、解決する。おそらく、普通のドラマなら、ギャルソン誕生までを1話に、つまり、1エピソード1話とするのが通常だが、このドラマは3つのエピソードを1話でやってしまうという贅沢な作り。だから、疾走感があり、中だるみすることなく楽しめる。最高の脚本に最高の演出、そして、最高のキャストで織りなす世界感が素晴らしい。三ツ星クラスのドラマだ。

   終盤、「なんで、僕をこの店に誘ってくれたんですか?」とシェフに訊ねると、「ギャルソンに向いていると思ったから」と。その理由は、8年前、駅前のラーメン屋で10人分もの注文を聞き分けていたバイトの子がいて......」と。それが自分だとわかり驚く高築。シェフの記憶力の凄さはケタ違い。その記憶力と洞察力で、これからどんな難事件を解決するのか、見ものだ。出てくるフランス料理も美味しそうで、こんなお店があったら、行ってみたい。(月曜よる11時6分~)

(くろうさぎ)

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