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疑わしきは罰せずの2つの事件――紀州のドンファン殺害は『印象捜査』、ALS安楽死の医師を連続殺人犯呼ばわりの違和感

   事件ものを2本。フライデーは、紀州のドン・ファン殺人の容疑で逮捕された須藤早貴被告の裁判の危うさについて報じている。検察は彼女を逮捕直後から、殺されたと思われる野崎幸助の関係者を次々に呼び出し、聴取を行っているという。実兄の豊吉は80歳を超える高齢者だが、聴取は2時間近くに及んだという。だが、聞かれたのは、「彼女の性格とか私が受けた印象」だったそうだ。野崎の実妹や元妻も呼び出されたそうだが、やはり聞かれたのは早貴の印象だけだったという。

   「検察としては、来る裁判員裁判に向けて早貴被告の印象を固めたいんでしょう。殺害の直接証拠がないというのはどうやら事実のようです」(全国紙検察担当記者)。犯行が可能な時間に自宅にいたのが彼女だけだという「状況証拠」だけで公判を維持するために、裁判員に悪印象を与える調書をつくろうと考えているようだというのだが、もしそうだとしたら、何のために3年近くも捜査を行ってきたのか。

   週刊誌も、野崎社長は早貴と別れたがっていた、手切れ金は30万円だといわれて、早貴が切れたなどと、今更事を挙って報じている。動機は間違いなくあるが、だからといって、みんながみんな人を殺すわけではない。疑わしきは罰せずという基本に立ち返れば、無罪の可能性が高いと思う。

   こちらは父親を母親、友人と殺したという疑惑である。5月12日、京都府警は医師の山本直樹容疑者と大久保愉一容疑者、さらに山本の母親・淳子容疑者を逮捕した。山本と大久保は、2019年11月に、難病の筋委縮性側索硬化症(ALS)の女性に薬物を投与して、安楽死させた嘱託殺人罪で逮捕・起訴され、公判を待つ身である。

   週刊文春、週新潮ともに、衰弱している父親に主治医が胃ろうの処置を取ろうとしたところ、山本が「長生きさせてどうする」と拒否し、父親を退院させて、その日に殺したと報じている。

   私は、ALS患者の女性を安楽死させたのと同様、父親を苦しませずに安楽死させたので、一般的な殺人事件とは分けて考えるべきではないかと思っている。私の父親は弱ってきても、飯だけは自分でつくり、あちこちこぼしながら食べていた。何度も誤嚥性肺炎を起こしたため仕方なく入院させた。担当の若い医者は、何度も「胃ろうをやりましょう」といってきたが断った。老いた父には食べることしか楽しみがなかったからだ。病院は胃ろうをして、早く病院から出したかったのだ。

   ついに胃ろうを付けることに同意してしまった。すると父親はみるみる元気を失い、寝たきりになって、3か月後に亡くなってしまった。今でも、あのとき胃ろうにしなければ、もう少し元気でいられたのにと後悔している。

   山本がいったのとは少し違うと思うが、胃ろうで植物人間のように生きていくならという思いがあったのではないか。だから殺していいとはいわないが、ALS患者を殺した犯人が父親も殺していたと、連続殺人魔のように非難するのではなく、安楽死について真剣に考えるきっかけにしなくてはいけないと思う。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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