神崎(松坂桃李)はどちらを選ぶ? 「事なかれ主義」派VS「正論」派
「今ここにある危機とぼくの好感度について」(NHK総合)

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   名門国立大学・帝都大学文学部を卒業した関東中央テレビのイケメンアナウンサー・神崎真(松坂桃李)は、好感度維持のため、当たり障りのない発言だけを心がけてきた。しかし、34歳になった今、あまりに中身のないコメントが視聴者に飽きられ、人気低迷に悩んでいた。そんなとき、大学の恩師で帝都大学総長・三芳(松重豊)に誘われ、渡りに舟と母校の広報マンに転職する。だが、そこはアカデミックで華やかなイメージとは裏腹に、百鬼夜行する伏魔殿だった。

   転職早々に、アルツハイマー治療の研究でノーベル賞候補の呼び声が高いスター教授・岸谷(辰巳琢郎)の論文捏造疑惑や、大学100周年記念イベントのゲストをめぐってネットで炎上した上に爆破予告まで届くといった事件が立て続けに起きる。それまでは事件関係者を『追う』立場だった神崎が、今度は一転してマスコミに『追われる』立場に立たされたのだ。

  • 「今ここにある危機とぼくの好感度について」(NHK総合)の番組公式サイトより
    「今ここにある危機とぼくの好感度について」(NHK総合)の番組公式サイトより
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ダイジェスト放送も

   そのたびに、事なかれ主義で事件を隠蔽しようとする広報課長・石田(渡辺いっけい)と、堂々と真実を公表すべきだと正論を吐いて首を突っ込んでくる教育学教授・室田(髙橋和也)の板挟みにあい、何の考えも意見も持たない神崎はただ右往左往するばかりだ。

   さらに、大学の最高意思決定機関である理事会でも、陰険な権力争いが渦巻いている。

   もともとは考古学者だった三芳総長は「社会はいつどんな危機的状況に陥るか分からない。大学の社会的使命とは、どんな時も自分の頭で考えることができる人間を1人でも多く輩出すること」との信念から、国や企業の干渉・介入を極力排除して大学の自治を守るべきだと考えている。

   一方、三芳の後釜を狙う理事・須田(國村隼)は、大学が生き残るためには社会に広く認められる研究成果を出し、潤沢な資金を得ることが第一という考え。三芳にも「先日も田中大臣補佐官とゴルフをしたとき、国立大学というものは大学人のものじゃなく、国のものだと釘を刺されましたよ」と、国や財界とパイプの太さをほのめかし、慇懃無礼に三芳を牽制する。ほかのほとんどの理事たちは、『裏総長』と言われる須田のご機嫌取りに余念がないという体たらくだ。

   ほかの教授や職員、学生たちも含め、そこに描かれる人間関係はまさに『社会の縮図』そのもの。「ウチの会社にもいるよ、こんなヤツら」と感じる視聴者も多いのではないか。

   連続テレビ小説「カーネーション」やスペシャルドラマ「ストレンジャー~上海の芥川龍之介~」などNHKとなじみ深い脚本家・渡辺あやのオリジナル脚本。かつて大学病院における権力抗争を描いて大ヒットした「白い巨塔」のように重くなりがちなテーマながら、芸達者な俳優たちの軽妙でユーモラスな演技もあって、シリアスな部分とお遊びの部分がほどよく混じり合った上質なブラックコメディーに仕上がっている。

   今週末22日(2021年5月)に放送される第4話(全5話)では、薄暗い研究室で吸血昆虫を飼育する不気味な准教授役の嶋田久作や、沢田研二をパロったような変人の分子生物学教授役の池田成志の怪演・奇演も楽しみだ。

   その一方で、残すところ2話のみとなり、これまでのところほとんど成長が見られない神崎が、果たしてどれだけ変われるのか......ちょっと心配ではある。

   「過去の放送を見てないよ」という人もご安心を。19日(水)よる11時40分から、NHK総合で過去のエピソードをギュっと凝縮した「まだ間にあう!第1~3回ダイジェスト」が放送される。(毎週土曜よる9時~)

(寒山)

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