愛知県西尾市の近藤芳英副市長が、新型コロナウイルスのワクチン接種を担当する部署に、スギ薬局を展開する「スギホールディングス(HD)」の杉浦広一会長(70)と妻の昭子相談役(67)を優先するよう指示していたことは、謝罪や予約取り消しで済む問題なのか。副市長は「夫妻に市にさまざまなご支援をいただいておりましたため」と釈明しているが、支援の見返りで優遇したのであれば、これは汚職にならないのか。
12日(2021年5月)の「スッキリ」が詳しい経緯を伝えた。4月12日に会長秘書から市の健康課に電話があり、「(会長夫妻を)高齢者入所者施設の先行接種枠で受けさせてほしい」という要請を受けたという。健康福祉部長が「特別扱いはできない」と断ると、今度は「夫妻は薬剤師でもあるので、医療従事者枠で」と言ってきて、部長はこの時も「医療従事者への接種は県が判断するもの」と断っている。こうした秘書からの電話は10回以上あったという。
犬山紙子「絶対ダメですよ」
すると、4月中旬になって、近藤副市長から現場に「何とかならないか」という指示があり、5月10日の予約が入れられた。その接種当日、「某新聞(中日新聞)の記者から電話で、内部告発があった旨の指摘」(近藤副市長)を受け、市はすでに接種会場に来ていた杉浦夫妻の接種を大慌てで取り消した。
西尾市はスギ薬局が1号店を出した地元なのだが、近藤副市長のいう「さまざま支援」とは何なのか。市議は「西尾市民げんきプラザの施設をスギHDが造って、無償貸与している」と話す。
犬山紙子(エッセイスト)「市に貢献していることとワクチンを接種することをごっちゃにしては絶対ダメですよ。どれだけ支援したかで、命の優先順位ができてしまうということですから」
スギHDは「(会長夫妻を)慮った当社秘書が、使命感ゆえにお問い合わせを繰り返しご迷惑をおかけしたと考えています。会長はアナフィラキシーショックを経験しており、ワクチン接種を希望しておりません」と釈明した。「秘書が......」とは、こういう疑惑でいつも聞くセリフだ。
日本感染症学会指導医の佐藤昭裕医師は、ほかにも『忖度』が横行しているのではないかと心配した。「海外では権力者に便宜を図ったということがあるので、日本でも当然あると思っていました。(西尾市は)氷山の一角じゃないかなと、個人的には思ってしまいました」
「市長案件」「局長案件」「××センセイ案件」なんていう隠語が、全国の役所の中で飛び交っているかもしれない。
(カズキ)