先日、歌舞伎座で「桜姫東文章 上の巻」を観ました。狂言歌舞伎の作者として有名な四代目鶴屋南北作で、主演は、片岡仁左衛門と坂東玉三郎です。仁左衛門の孫の片岡千之助君も出演しており、彼とのご縁から観に行くことになりました。
「桜姫東文章」は、主役二人がそれぞれ二役を演じており、説明するストーリーは複雑ですが、その人間関係が"命"の世話物です。
仁左衛門は僧侶(長谷寺の自休、のちの清玄)と強盗(釣鐘権助)の二役。玉三郎は、稚児・白菊丸と桜姫の二役です。
片岡千之助君は桜姫の弟の吉田松若役です。
かつての心中相手が美しい桜姫に生まれ変わっていた
舞台は、自休と白菊丸の心中シーンから始まります。心中しようとするものの自休は、先に行った白菊丸の後を追おうとして、果たせませんでした。
17年の時が過ぎ、自休は有名な僧侶清玄になり、白菊丸は、吉田家のお姫様として生まれ変わっていました。あるとき、城に押し入った強盗の釣鐘権助との間に子どもを身ごもったことで出家を考えます。
ところが、権助がある日突然現れたときに、桜姫は全てを忘れて、権助との情愛に耽るのです。
そこに、清玄が登場して、桜姫がかつての心中未遂の相手で生まれ変わりであることを見極め、桜姫をかばって、自分の身の没落をも顧みず、桜姫が身籠っている子の父親は、自分だと名乗り出るのです。
その結果、二人とも没落して街をそれぞれ別にさまよいます。
そこから二転三転して、桜姫と権助の子どもを抱いた清玄は、やつれ果てた桜姫とすれ違うのですが、互いの存在に気づくことなく、行ってしまうのです。
これは、テレビドラマにも通じる下世話"な話ではありますが、人間の愛情と情念の深さを感じました。