「きのう(日本時間2021年4月26日)、授賞式が行われたアカデミー賞。中国出身の女性監督が作品賞を受賞しました。しかし出身地の中国では全く喜ばれていないそうです」とMCの谷原章介が切り出した。話題になったのは、作品賞、主演女優賞、監督賞と、見事3冠に輝いた「ノマドランド」だ。
監督したのは中国出身のクロエ・ジャオさん。白人以外の女性監督として史上初めての受賞という快挙だ。ジャオ監督は、1982年中国北京で生まれ、アメリカの大学院で映像製作を学んだという経歴を持つ。中国の規制が厳しく外国映画を自由に見られなかった幼少期には、日本の漫画を読んでいたと言い、当時は漫画家志望だったそうだ。
「新たなジャンルを切り開いた」
そんなジャオ監督が手掛けた同作は、企業の破たんと共に住居を失った主人公・ファーンが亡き夫の思い出と共にキャンピングカーで季節労働の現場を渡り歩く旅を通し、車中生活をする人たちとの交流を描いた作品。
映画評論家の有村昆さんは2つの見どころを挙げる。1つ目は「演出していない演出」だ。「エキストラの7割近くが実際に車上生活を送っている人たちなんです。セリフを与えてしまうと、結果棒読みになってしまって違和感が出てしまう。役者がセリフを引き出して、普段しゃべっているような会話を撮るという手法を取ったんです」と有村さん。
2つ目は「照明を使わずに太陽光のみを使ったところ」。有村さんは「普通は照明をたいてレフ版を使い、役者の肌がきれいに見えるようにするが、(同作は)使っていない」と言い、「まさにドキュメンタリーとフィクションの境界線を越える新たなジャンルを切り開いた」と大絶賛している。