多部未華子にOL役が似合うように、玉木宏にはダーティーな役がよく似合う。昨(2020)年夏の「竜の道 二つの顔の復讐者」(フジテレビ系)に続き、このピカレスク・ドラマで玉木が演じるのは、出世のためなら違法行為も厭わないエリート警察官だ。
ドラマの舞台は、首都・東京の治安を守る警視庁。その中で「エリート」と言われるキャリア組には、東京大学卒業者が集まる「東大派」、鹿児島県を中心に九州出身者が集まる「薩摩派」、地方大学卒業者が集まる「外様派」の3大派閥があり、それぞれの派閥のボスが、警視庁トップの警視総監の座を目指して切磋琢磨する......のならいいが、実際には、犯罪捜査そっちのけで足の引っ張り合いを演じている。
父が遺した言葉
そんな警視庁にあって「外様派」に属する刑事部捜査共助課理事官・上條漣(玉木宏)は、「悪魔に魂を売らなければ、本当の間違いは正せない」という歪んだ信念の持ち主だ。
その言葉は、警視庁捜査一課刑事だった父・勇仁(岡部たかし)が自殺する直前、幼い上條に遺した言葉だった。勇仁は警察官になりたいと言う上條に、「俺は強きにくじかれた弱い人間だ」とも言っていた。勇仁は警察内部の陰謀に巻き込まれて自殺したらしい。
警察官になった上條はそんな父親を反面教師として、高度なプロファイリング能力を武器に「必ず警察の頂点まで上り詰めてやる」という野望を胸に秘めている。
その野望達成のためには、取りあえず派閥のボスの刑事部長・千堂大善(椎名桔平)を警視総監にするのが近道だと考える上條は、千堂のポイント稼ぎのために、証拠の捏造や犯罪のそそのかし、他派閥の手柄の横取りも平気で行う悪辣さだ。
かつて勇仁の後輩だった2人の元警察官が、そんな強引で危なっかしい上條を陰で支える。1人は上條の情報屋・刈谷銀次郎(橋本じゅん)、もう1人は警察官僚御用達の銀座の高級クラブのママ・小宮志歩(高岡早紀)だ。2人とも勇仁に恩義を感じていて、その息子の上條の汚い『裏工作』にも協力する。