原作は、「小説の神様」と呼ばれた白樺派の小説家・志賀直哉の短編小説「流行感冒」。今から約100年前、世界中でパンデミックを起こした「スペイン風邪」と呼ばれた流行感冒は、全世界で約5億人が感染し、一説には1億人超が死亡したともいわれる。日本でも大正時代中期に大流行し、3年間で約40万人の死者が出たとされる。
小説家の私(本木雅弘)は、妻の春子(安藤サクラ)と4歳の娘・左枝子(志水心音)、それに女中・石(古川琴音)、きみ(松田るか)とともに暮らしている。夫婦は最初の子供を病気で亡くしており、左枝子の健康に対して臆病なほど神経質になっていた。
芝居興行に行くことを禁じたが...
大正7(1918)年秋になると、流行感冒(スペイン風邪)の感染者が、地元でも増え始めた。そんな中、旅役者の一行が今年も町にやって来た。「私」は家族や女中たちに、大勢の人々が集まる芝居興行に行くことを禁じたが、その夜中、石がこっそり家を抜け出したことが発覚した。
翌朝、「私」が石に、芝居を観に行ったのではないかと問い質したところ、石はキッパリと否定した。しかし、石の釈明は、ツジツマの合わないことばかりだ。「私」は石が信じられず、顔を見るのも嫌になった。クビにしようとしたが、春子にも反対され、まるで自分が暴君になったような自己嫌悪に陥ってしまう。
そんなある日、とんでもない事態が出来する。なんと「私」が不注意から流行感冒にかかり、それをきっかけに石以外の全員が家庭内感染してしまったのだ。そのとき、「私」に毛嫌いされていた石が取った行動は、「私」にとってあまりに意外なものだった......。(よる9時放送)
(寒山)