<森村誠一ミステリースペシャル 終着駅シリーズ37 「停年のない殺意」>(テレビ朝日系4月1日木曜放送)
片岡鶴太郎扮する新宿西署刑事が殺人事件被害者が見せなかった顔に迫る

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   新宿西署のベテラン刑事、モーさんこと牛尾正直の活躍を描く森村誠一原作の人気ドラマ「終着駅シリーズ」最新作。

   夜10時過ぎ、東京・新宿の公園で、文房具メーカー社長秘書・伊庭崇彦(堀井新太)の遺体が見つかった。臨場した警視庁新宿西署刑事課強行犯捜査係の警部補・牛尾正直(片岡鶴太郎)は、第一発見者である被害者の妹・晴美(山谷花純)から事情を聴いた。近くにある崇彦のマンションで夜9時に会う約束をしていた晴美は、時間通りに崇彦の部屋のインターホンを押したが、応答がなかった。そこで、帰りを待ちながら公園をぶらついていたところ、偶然にも兄の遺体を発見したという。

   晴美によれば、崇彦は事件の前々日、晴美に電話をかけ、「面白いものを見せてやるから来い。それを見たら最初はケタケタ笑うだろうけど、最後は必ず泣く」と言っていたという。しかし、晴美は『面白いもの』とは何なのかを聞いておらず、まったく想像もつかないと困惑していた。

   崇彦の遺体は新宿西署の霊安室に安置され、故郷の太平洋に面した茨城県大洗町を訪ねていたという父親・悌二(尾美としのり)、友人らと岐阜県高山市に旅行に出かけていた母親・頼子(七瀬なつみ)が急いで駆けつけてきた。その2人も、崇彦が言っていた『面白いもの』に心当たりはないという。

   牛尾たちが崇彦のマンションを調べたところ、事件解明につながりそうな手がかりは見つからなかった。だが、牛尾には、冷蔵庫にあった細長いケーキが気になった。晴美と食べるつもりなら2つにカットするはずなのに、なぜか4等分されていたのだ。

   検視の結果、崇彦は公園内で何者かと揉み合った末に階段から突き落とされ、後頭部を強打して死亡したと判明した。階段から少し離れた場所で遺体が見つかったのは、崇彦が転落後、朦朧とした意識の中で歩きだしたものの、しばらくして力尽きて絶命したと考えられた。

社長と父親の縁

   一方、崇彦は被害に遭う前、定時に退社した後、同僚と居酒屋に酒を飲んだことも分かった。しかし、店を出てから殺害されるまで2時間半の行動が不明だった。この『空白の2時間半』が、牛尾たちの前に立ちはだかる。

   また、崇彦が勤めていた文房具メーカー社長・市野清明(国広富之)と崇彦の父親の悌二は大学の同期で、悌二はその会社で長年、総務部長を務めていた。そして、悌二の定年退職の日に入れ違いで崇彦が入社し、市野の秘書として働き始めたという。

   捜査員たちの懸命な聞き込みにも関わらず、八王子市内の実家の周辺でも、社長の市野をはじめ会社でも、誰もが崇彦のことを『優秀で思いやりのある青年』とほめるばかりだ。悪い噂の1つも聞こえてこないのはおかしいと不審に思った牛尾は、崇彦には誰にも見せないウラの顔を持っていたのではないかと直感する。また、悌二がふと、「7.5センチの幸せ」とつぶやくのを耳にした。

   さらに捜査を進めた結果、崇彦名義の銀行口座に合計750万円が振り込まれていた事実や、母親の頼子の不倫疑惑までも浮上する。

   『最後は必ず泣く面白いもの』『4等分されたケーキ』『空白の2時間半』『7.5センチの幸せ』『750万円の振り込み』......こうした一見関係なさそうな謎が1本の線でつながったとき、平凡な一家に潜む悲しい真実が暴き出され、前代未聞の復讐劇の真相が明らかになる。

   余談だが、昨年4月に新型コロナによる肺炎のため死去した岡江久美子さん演じる牛尾の妻・澄枝も、過ぎし日の追憶の中に登場するという。包み込むような優しい笑顔を見せてくれた岡江さんのファンも見逃せない。(よる8時放送)

                                                                 

寒山

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