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全日本私立幼稚園連合会の4億円使途不明金事件は政治絡みか

   次は新潮。全国の幼稚園が加盟する全日本私立幼稚園連合会で発覚した4億円を超える使途不明金事件は、不可解極まりない。

   NHKのスクープだが、当初、香川敬前会長と当時の事務局長による単純な詐欺事件かと思ったが、どうやらそうではなく、政治絡みのようである。

   連合会とその系列のPTA連合会が刑事告訴に踏み切ったが、代理人の大濱正裕弁護士によると、「警察が捜査しないと全容が判明しない」というのが告訴の理由だそうだ。

   警視庁捜査二課が担当することになったが、受理までの時間も早すぎると疑問が出ている。新潮によれば、その裏には香川前会長が山口県で幼稚園を経営しながら、同時に県の公安委員に就いていたことが影響しているそうである。

   警察庁は詳細な情報を把握できていて、その結果、警視庁に刑事告訴させる方針が決まったという。動いたのは警察庁出身の杉田和博官房副長官と菅の秘書官もやっていた警察庁ナンバー2の中村格次長だというのである。

   この案件が菅官邸の意向で、政治家までいかないようにしたからだと、大手紙の社会部記者が解説する。

   「かりに東京地検特捜部が捜査することになれば、連合会のブラックボックスに斬り込むことになる。かりに森(喜朗元首相=筆者注)さんを筆頭とする自民党の文教族議員に裏金工作が及んでいたなんていう話になったら大変です」

   また森がらみの不祥事なのか。この問題を追及している立憲民主党の牧義夫代議士は、「金の使途はあくまで不明なのです。なのに、告訴容疑に業務上横領が入っているところに、前会長と元事務局長にすべての責任を押しつけて終わらせる意図が見え隠れしているように思います」と、疑問を呈している。

   香川前会長は1億5000万円をすでに弁済したという。連合会サイドは、そのほかは使途不明金で済ませようと考えていたところ、NHKに報じられてしまったようだ。

   連合会にとっての悲願は、幼児教育無償化だったが、一昨年10月にスタートさせることができた。そのための政界工作資金として使われたのではないのか。

   横領で幕引きといわれていることに香川前会長は異を唱えているそうだ。PTA連合会の会長である河村建夫元官房長官は、6年前に連合会にパーティ券30万円分を買ってもらっていたことが、新潮の取材で明らかになっている。森元首相を筆頭に、文教族議員たちにカネが配られていた。そう考えれば、この事件は腑に落ちるのだが。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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