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大手新聞や民放キー局の「波取り記者」

   菅政権を揺るがしている総務省スキャンダルだが、その中でメディアが触れない重大な問題があると、ポストが報じている。

   高橋洋一嘉悦大学教授が指摘する。

   「放送や通信に利用される電波(周波数帯)は大きなビジネスを生むため、先進国ではどの事業者に電波の利用権を与えるかを入札で決めるが、日本は総務省が割り当てる。(中略)役人の裁量で電波の割り当てを決めるという利権構造にこそ問題の本質がある」

   欧米のようにオークションを導入すれば2兆円の国庫収入を生み出すといわれるそうだが、総務省はその裁量権で、メディアの首根っこを押さえることができるのだ。

   欧米では規制されているが、日本では新聞がテレビ局を系列化することが認められている。そのために、新聞も自由にものがいえないのだ。

   大手新聞や民放キー局には記事を書かない「波取り記者」というのがいる。総務省から電波の割り当てをもらうのが役目だから、そう呼ばれるのだ。

   総務省の記者クラブに各社最低1人はいて、役所の審議会や研究会に参加できるそうだ。

   テレビで政権批判などをやると、「電波停止もあり得る」などと総務相が居丈高にいい放つのは、メディアなどいつでも潰せると考えているからだ。なかでも菅は、その"権力"を使って、総務省を意のままに動かし、メディアをコントロールしてきた。

   高橋嘉悦大教授は、「新聞やテレビは総務省の接待問題は報じても、波取り記者の存在は隠している。恥ずかしくないのでしょうか」と批判する。

   恥ずかしいと思ったら、メディアになんかいられないだろう。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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