全国の私立幼稚園の9割が加盟する全日本私立幼稚園連合会で、4億円に上る使途不明金が発覚した。発覚を隠すために通帳の偽造をしていたのが香川敬前会長。
使途不明金の調査に当たった北海道私立幼稚園協会連合会の川畠教孝理事は「違和感はあった」としながらも、「今回のような金額には驚いた」と話す。資料のコピーを見て、数字が違ったり、コピーの上に数字を書き込んでいたりしているのに気づき、偽造じゃないかと感じたと話す。香川前会長が経営する幼稚園に子供を通わせていたという父親は「何回も集金にくるので、2回支払った家もあった。管理があいまいだったのではないか」と打ち明けた。また、全千葉県私立幼稚園連合会の畠山一雄理事も「本当は何にお金を使ったのかということが一番知りたい」と話した。
通帳偽造への関与認め辞任した私立幼稚園連合会前会長
全日本私立幼稚園連合会では2017年度から20年度までの間に、基金が取り崩されており、少なくとも4億円の使途不明金が発覚している。きっかけとなったのは、19年9月の連合会の監査会で、複数の通帳偽造が発覚した。香川前会長は偽造への関与を認めて11月に辞任したが、個人的使用については否定している。連合会では、加盟する幼稚園1園あたり1万2000円と園児1人当たり70円の会費を全国の団体から集めていたという。
川畠理事によると、監査を行う監事が「これではハンコが押せない」というほど、数字が違っており、偽造じゃないかということになったが、前会長からは明快な回答は得られず、領収書もなかった。会議費に1000万円計上されているなど不審な点はあったが、私的使用ではないと言われて、それ以上追及できなかったという。
香川前会長は山口県防府市在住で、市内の「明覚寺」の住職。近隣住民によると「僧侶でありながらあんなことできるのか」「高級車に乗り、ぜいたくしている感じに見えた」。香川前会長は、境内にある鞠生幼稚園の園長も務める。住民によると、この幼稚園は名門で、NHK大河ドラマ「花燃ゆ」の主人公が働きかけて作られた、日本最古の仏教系幼稚園だという。
畠山理事によると、香川前会長は「幼児教育無償化など、幼児教育振興法の成立に向けてリーダーシップをもって頑張っていた」という。香川前会長が挨拶した会合には当時の安倍総理大臣も出席していた。
この件とは別に、全日本私立幼稚園PTA連合会でも使途不明金があったことが明らかになっているが、会長を務める河村建夫元官房長官は「令和2年度の決算において4100万円ほど使途不明金が出ているとの説明を受け大変驚いた。事務局に任せきりにしていた責任を感じている」と話した。野党立憲民主党の安住国対委員長は「政治家の関与があるのかどうかを解明しなければならないと思う」として追及していく構えだ。
香川前会長は、任期は3期6年の予定だったが、3期終了後に「もう1期やりたい」と申し出があり、結果的に5期10年の長期政権となった。前会長は辞任後に1億5000万円を連合会に弁済している。
日本テレビ報道局社会部解説委員の下川美奈は「個人的流用を本人は否定しているが、気になるのは永田町付近で何度も目撃されていること。口利きのためにお金を使っていたとなると、事件の様相が変わってくる」とコメント。
菊地幸夫弁護士によると、「通帳偽造は私文書偽造罪に該当。使途不明金と無関係の場合は刑事責任に問うのは難しい。連合会が損害賠償責任・使用者責任を民事裁判で問うことは可能で、使途不明金と関係がある場合、業務上横領罪に該当する」という。
MCの加藤浩次は「わからないことが多すぎる」とコメントした。