千之助「頼むわ!万太郎一座に勝てる芝居を一緒に作ったってくれ!」
一平と千之助は初めて協力しながら台本を作ることになった。昼夜を忘れ、たびたび行き詰まりながらもできた台本が新作『丘の一本杉』だ。
千之助「これいけるわ、二代目。これやったら絶対に勝てるで!」
再び結束した劇団員たちで演じた、笑って泣ける父と息子の芝居は大盛況になった。客席には、満足そうに笑みを浮かべる万太郎の姿もあった。
対決後、顔を合わせた千之助と万太郎は再び火花を散らす
そして千秋楽の幕が下りた。家庭劇はたった15人の来場者数の差で、万太郎一座に負けた。しかし、全力を出し尽くした千代たちには悔しさはなかった。
それから数日後...。居酒屋で酒を飲んでいた万太郎に、千之助は近づいた。万太郎は結局チャップリンには会わなかった。
万太郎「まだ、この国でやり残したことができたさかいな。世界は二の次。家庭劇に圧倒的な差をつけて勝つことが先や」
千之助「けど、久々に見せてもろた。兄さんのホンマに楽しそうな顔」
万太郎「まだまだや...。もっと楽しませてもらわな、お前を切り捨てた意味あらへん」
千之助「そうやって余裕かましとけ。来年の今頃には喜劇王の名はこのわしのもんや」
笑い声が響いたが、2人の目は笑っていなかった。
(NHK総合あさ8時放送)