このところ頭の中でずっとビリー・ジョエルの「ピアノマン」が流れている。間違いなくこのドラマの影響だ。
タイトルの「六畳間のピアノマン」は心優しき青年・夏野誠(古館佑太郎)の投稿サイト上の名前。彼が六畳間で歌うビリー・ジョエルの「ピアノマン」が重要な鍵になっていて、毎回、絶妙のタイミングで流れてくる「ピアノマン」に涙が溢れる。
全4回のオムニバスドラマ。毎回、主人公が代わり、それぞれの物語が交錯していくところが醍醐味。あらためて、人はひとりでは生きていけない、ということがわかる。そして、ある人の生き方や行動が、ほかの誰かの人生に影響を与えたり、生きる支えになったりすることがある。コロナ禍の今、そんな人の縁(えにし)についても考えさせられるドラマだ。
容赦ないパワハラシーンがリアル。心がヒリヒリ...
第1話「自分を救う勇気」の主役を務めるのは加藤シゲアキ。派遣社員として働く村沢(加藤)がパワハラを受けている社員を助けようとする。8年前、彼もまたパワハラ企業の新入社員だった......というもので、延々パワハラのシーンが流れ、見ていて心がヒリヒリした。というのも、パワハラ上司を演じるのがメッセンジャー黒田で、そのダミ声と目つき、関西弁で捲し立てる容赦ない言葉や罵倒が、もう、ドキュメンタリーかと思うくらいリアルで見ていられないほどだったから。さらに、もうひとり、8年前、村沢が新入社員として入ったブラック企業の上司を演じるのがネプチューン原田泰造で、こちらも、黒田に負けない迫力で、2人の芸人俳優の熱演にゾワリ。
リアル過ぎるパワハラシーンに、もう見るのはやめようかとも思ったが、第2話、第3話とストーリーが展開していくうちに、優しいエピソードが増え、ほっとひと息。第2話「優しい息子」の主役、息子を亡くした父の慟哭と後悔、再生を描く回は秀逸だった。
第3話「いい人になりたい」では、夏野にパワハラをしていた上司・上河内(原田)が主役で、これもまた沁みる話だった。
いいドラマというのはこういうドラマのことだ。次回で終わってしまうのが寂しい。脚本・足立伸。NHK大阪制作。(土曜よる9時~)
くろうさぎ