満を持して「証拠音声」突き付けた「週刊文春」、菅首相長男の接待受けた総務省官僚のウソ答弁明らかに...「衛星」「BS」の政界工作あった! 橋本聖子・五輪組織委新会長の仕事は「東京五輪は中止します」宣言か?

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   菅首相の完敗である。

   文春(2/11日号)が、菅の長男で「東北新社」の部長職にある正剛が、許認可権限を持つ総務省のトップ官僚たちを接待した上にタクシーチケットまで渡していたと報じた。

   国会でその件について追及された菅は、「長男とは別人格」だと突っぱねた。

   文春は次号で、菅が総務大臣に就任したとき、就職もしないでブラブラしていた長男を大臣秘書官にして、年400万円ほどの給与をもらえるようにしてやった、長男が高級マンションを購入した際もその大部分を菅が出してやっていたのではないかと報じた。

   また、菅が絶大な権力を行使できる総務省が許認可権を持つ衛星放送事業のある「東北新社」に長男を入れた。長男は親の威光を笠に、総務省の官僚たちを供応して、「東北新社」で順調に出世していったと報じた。

   その中の一人、秋本芳徳情報流通行政局長は連日国会に呼ばれ、厳しい追及を受けているが(谷脇康彦総務審議官や吉田眞人総務審議官は事務次官級のため呼ばれない)、「東北新社が利害関係者だとは思わなかった」「(会合で=筆者注)衛星放送やスターチャンネルが話題になった記憶はございません」と繰り返し否定した。

   野党が要求している長男・正剛の国会招致は、自民党が飲むわけはない。このままいけば、当該の官僚たちは懲戒処分にはならず、軽い処分で終わるのではないかと思われた。

   だが文春は、このスクープを掲載した時から、藤井聡太のように先の先を読んでいた。菅の「子どもと親は別人格」答弁も、官僚たちの「記憶にございません」も想定内で、「これではどうだ」と繰り出した手は「大手飛車取り」であった。

   これが出ると知ったとき、菅や官僚たち、正剛はのけぞったに違いない。

   昨年の12月10日、秋本と、正剛や「東北新社」の子会社メディアサービスの木田由紀夫社長とのやり取りを、文春の記者が同じ店にいて、「"密談"の一部始終を目撃、付近の席で音声をメモ代わりに録音していた」というのである。

   音声記録には雑音が多いので、専門家にノイズ除去を依頼したという。文春の取材力は新聞をはるかに超えた。

   この音声の一部は文春オンラインで聞くことができる。話の内容は、BSから政界工作まで及んでいる。

   3人共に東北出身者だから、「福島は大七という日本酒が美味しい」という話から始まる。正剛は親父と違って酒は強いようだ。そして話題は核心へと近づいていく。

   正剛が「今回の衛星の移動も......」と切り出す。文春によれば、旧態然とした衛星放送事業に新規参入を推進する動きがあって、その旗振り役はNTTドコモ出身で、以前、総務政務官を務めた小林史明衆院議員だという。

   19年9月に電波監理審議会へ諮問し、吉本興業、ジャパネットホールディングス、松竹ブロードキャスティングの子会社の3社が認定され、今年の末にはBSで放送が開始されるという。

   それによって、「東北新社」が運営する『スターチャンネル』など既存のチャンネルは縮減が順次実施されていくというのである。社にとっては一大事であろう。

   正剛、木田から小林議員への"愚痴"のような言葉が漏れると秋本は、「でもどっかで一敗地に塗れないと、全然勘違いのままいっちゃいますよねぇ」という。

   「東北新社ら『既得権益者』にとって目障りな存在になっている小林氏を一度ガツンと『一敗地に塗れ』させようという政界工作の密談といっていい」(文春)

   東京都が飲食店に時短要請を行い、民間人に不要不急の外出を控えるようにと訴えていた最中に、正剛らがトップクラスの総務官僚たちを呼び出し、接待を続けていたのは、重要な許認可について相談するためだったのである。

   菅は、利害関係企業の接待に応じ、金品までもらっていた官僚たちを厳罰に処し、親の顔に泥を塗った長男・正剛に「東北新社」を辞めるよういい渡すべきである。

「魔の三回生」白須賀貴樹議員の夜遊び

   さて、この親にしてこの子あり。またまた自民党の衆院議員が若い愛人と夜な夜な遊び歩いていたことが文春で報じられ、離党する羽目になった。

   悪名高い「魔の三回生」の一人、白須賀貴樹議員(45)である。この議員、これまでも当て逃げ事故を起こしたり、秘書らが他の候補者のポスターをはがしたりしていたが、極め付きは、IR(統合型リゾート)汚職で起訴された秋元司衆院議員と同じように、中国企業からマカオ旅行接待時に現金100万円を受け取っていたことが発覚して、地元事務所が家宅捜索を受けている。

   そのため、地元県議9人によって、次の衆院選では別の候補を擁立すべしと、県連に嘆願書が提出されているのである。

   札付き"といってもいいこの議員、2月10日に、若い女性をマンションに迎えに行き、彼女と連れ立って赤坂のフレンチレストランへ。その後麻布十番の雑居ビルへと入り、午後10時ごろ出てきて、自宅マンションへ帰ったという。

   白須賀議員の相手の女性は、この雑居ビルにある会員制の高級ラウンジのホステスで、食事の後に同伴出勤していたそうだ。白須賀はかなり前に離婚しているが、地元にも説明していないという。

   彼女には「夜の仕事をやめてほしい」といっているようだが、彼女にはその気はなく、そのことでよくケンカになるという。

   1月には自民党の松本純ら3議員や公明党の遠山清彦議員の「夜遊び」が発覚して、離党や議員辞職しているのに、性懲りもなく遊び歩く議員が後を絶たないのは、菅政権のタガが緩んでいるとしか思えない。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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