学問の自由や大学の自治を守るために、公権力、とり分け警察権力の介入と闘った全共闘の時代とはまさに隔世の感だ。ドラマの中のフィクションだとしても、公立中学校の職員室に拳銃・警棒で武装した警察官が常駐し、生徒だろうが教師だろうが犯罪を犯した者は公衆の面前で逮捕して手錠をかけたり、額に拳銃を突き付けたりするのだから。
原作は、脚本家・演出家・作家である佐々木允郭の「スクールポリス」(ポプラ文庫)。アメリカや韓国ではすでに導入されている『学校内警察官』が主人公の異色の警察ドラマだ。
物語の舞台は、スクールポリス(SP)が試験的に導入された東京都住浜区立赤嶺中学校。SPに自ら志願して着任したのは、警視庁捜査一課きっての切れ者刑事・嶋田隆平(藤原竜也)。嶋田は着任初日、全校生徒や先生を前に「犯罪者に手加減はしない。遠慮なく警察に突き出します」と挨拶して物議を醸す。
嶋田はその言葉通り、生徒による教師への暴行、妊娠した教師への薬物攻撃、危険ドラッグ売買、女子更衣室の盗撮、そしてイジメなど、今どきの学校でありがちな事件を、あくまでも犯罪として取り締まり、罪を犯した者は容赦なく逮捕する。
「生徒を逮捕するのは行き過ぎです。生徒たちを導くのが私たち教師の役目です」などとしたり顔で建前を言う教師には「お前らが導けていないから、こうなったんだろ」と切り返し、「教師が真面目に向き合えば、イジメはなくなる」という単細胞の熱血教師には「イジメなんて言葉を使っていたら、イジメはなくならない。イジメは暴行、傷害、恐喝罪。イジメたヤツは犯罪者だ」と遠慮も忖度もない。教師にとっては身も蓋もない言いようだが、それが視聴者には小気味よく響く。
そんじょそこらの教師より、よほど「教育者」らしい面も
それでいて、嶋田は騒動を起こした生徒や被害に遭った生徒たちの自主性を重んじ、彼ら自身に問題を解決するよう促す。そんじょそこらの教師よりも、よほど『教育者』らしい一面も持ち合わせているのだ。
何か騒ぎが起きるたびに、学校の面目や世間の風当たりを気にして右往左往する教師たちに対して、「犯罪は犯罪。容赦なく逮捕する」とブレない嶋田には一本芯が通っていて、頼もしく見える。
また、犯人を取り押さえる際の藤原の、38歳という年齢を感じさせないキレッキレのアクションも、見どころの1つだ。
実社会では犯罪として処罰される行為が、学校では『教育』という隠れ蓑のもとに見逃され、それが一層の荒廃を招くという負のスパイラルに陥っている。このドラマは、そうしたもどかしい閉塞状況に一石を投じるドラマだ。「ウチの学校にも、こんなスクールポリスがいたらいいのに......」と思う生徒や父兄、さらには教師も多いのではないだろうか。
一方、このドラマ、ただ単に警察官が学校内外で犯罪者相手に大立ち回りを演じるだけのアクション・ドラマではない。嶋田がスクールポリスに志願したのは、隠された目的があったからだ。それは、この学校の女性教師が1年前に死亡した事件を調べることだった。
その教師は嶋田の最愛の恋人で、表向きは自宅アパートの階段から転落して死亡したことになっているが、実は殺された可能性を示す証拠が残されていたのだ。事件のきっかけは男性教師による女子生徒へのセクハラ(実態は痴漢=強制わいせつ)だが、その裏には赤嶺中学校の校長や東京都の教育長も絡む陰謀が渦巻いているらしい――という設定で、サスペンス・ドラマとしても楽しめる。
信用できる人間が誰1人いない孤立無援の学校で、嶋田が恋人の死の真相に迫っていく山場は、いよいよこれからだ。(毎週火曜よる9時~)
寒山