「21歳の娘に『ぼうや』と歌われても生意気と思えない風格」
「当時の潮流ですが、ほぼ2時間半歌いっぱなし。衣装替え程度の時間だけ。息も上がらず伸びやかに力強く歌い上げる声量は見事。滴る汗もぬぐいもせず、真っ向から音程も声質も変わらず。21歳の若い娘に『ぼうや』『未亡人=ウィドウ』と堂々と歌われてもちっとも生意気と思えない風格がすごい。21年間の人生経験や生き方の深さや向き合い方が、人間性を作るんだなぁと改めて感じます。ラスト2曲で感極まっても丁寧に真心を込めて歌い通す姿は、ものすごく美しかった。芸能界の風習のなか、こんなに地に足のついたプロ意識と俯瞰力があり、自分に正直で周囲に誠実で、威勢を張らず媚びない10代からの8年の彼女をみると、今もなお存在自体が卓越している」
「何なのだろう、この大人っぽさは。21歳という若さからは考えられない存在感。内面からにじみ出る自然体の美しさ。そして一番は歌の巧さだ。昨今の、巻き舌で何を言っているのか分からない歌い方に辟易しているので、活舌よく、低音も高音もブレなく歌い上げる歌唱力は圧倒的で心が震えた。ペンライトやサイリウムのなかった頃の客席は、暗闇だったが観客の感動と熱気に満ちていたように見える。番組では切れてしまったが、あの後は鳴りやまない拍手と『百恵ちゃんありがとー!!』の感謝の声が響き渡っていたのではないだろうか。激動の昭和の後半、大人びた少女は一人の女性として、ステージから去って行った。まばゆい伝説を残して」