逆転無罪判決、スポーツ大番狂わせ、奇跡の生還など、ドラマよりもドラマチックな逆転劇を見せてくれるNHKの「逆転人生」(月曜よる10時)。25日(2021年1月)放送の「貧困の連鎖を断て! 西成高校の挑戦」は、特にインパクトがあり、「神回」との評価が集まっている。
着の身着のまま登校する生徒や校内で喫煙を注意されても教師を無視する生徒......2000年代初め頃の大阪府立西成高校は、非行や中退の多い「教育困難校」だった。山田勝治教頭(現校長)が、2007年からプロジェクトチームを立ち上げ、「反貧困学習」に取り組んだ。
非正規労働者やシングルマザーの親も少なくなかった。育児放棄、教育放棄され、夢を失った生徒たちに「生きる力」を与えることを目指した。
年間600件もの家庭訪問を行い、生徒に寄り添い、力づけた。家族がいなくなった生徒には、山田さんらが動いて生活保護を受けさせ、アパートを確保し、中退しない道を切り拓いた。
授業では、アルバイトを不当解雇された先輩の例を取り上げ、ブラック企業との戦い方や労働者を守る知識を教えた。生徒たちは身近な問題に学ぶ意欲を取り返した。
2012年からは就職支援に力を入れ、地域企業330社を教師が訪問し、就職希望者99人全員の就職内定を実現した。就職率100%は今も続いている。
再現ドラマの場面も多いが、いま27歳になった、かつての生徒が実名で登場し、野外のベンチに寝たことを回想したり、現在、社員として働きながら生き生きとバンド活動をする様子などを紹介したりした。
「反貧困学習はすべての子供に必要なんじゃないかと思った」「これが生きたホンモノの教育」などネットには、この放送への賛辞が並んだ。
29日(金曜深夜0時15分)に再放送がある。進学ばかりが話題になりがちな教育界に一石を投じた「秀作」だ。
(TVウォッチ編集部)