NHK大河ドラマ「麒麟がくる」がいよいよクライマックスを迎え、「本能寺の変」がどう描かれるか、日本中が固唾を飲んでいる。1月24日(2021年)の第42話では、正親町(おおぎまち)天皇、将軍・足利義昭に加え、徳川家康まで「アンチ信長」に浮上。
ここに来て、黒幕は朝廷、将軍、家康...と出そろってきた。次回の予告編では帰蝶まで「毒殺」をそそのかすシーンが登場、最後に本能寺の変始動スイッチを入れるのは帰蝶か!とネット上は騒然となっている。
「道三様ならどうする?」と聞かれた帰蝶が「毒を盛る、信長様に」
第42話は、明智光秀(長谷川博己)は依然、丹波を攻略中。信長(染谷将太)から摂津の国を任されていた有岡城城主の荒木村重(松角洋平)までもが信長(染谷将太)に反旗を翻す。光秀は、長女のお岸(天野菜月)が村重の長男・村次に嫁いでいたこともあり、秀吉と共に有岡城に出向いて村重を必死に説得する。だが、村重が首を縦に振ることはなく、秀吉は激しく憤る。
光秀は終わりの見えないすべての戦が、武士の棟梁たる将軍の復権に繋がっていると悟り、将軍・足利義昭(滝藤賢一)が追放された鞆の浦(とものうら)へ足を運ぶ。義昭は釣竿を垂らす暮らしをしていた。一緒に京に帰ろうと促す光秀に、義昭は「そなた一人の京ならば考える」と告げる。
一方、光秀が帝(坂東玉三郎)と会っていたと知った信長は、嫉妬に狂い、「何を話していた」と激怒して信長を殴打。光秀の心は信長から離れていく。そんななか、徳川家康(風間俊介)が光秀に密談を持ちかけた。信長から、自分の嫡男の信康と妻の築山殿を「殺せ」と命じられていることを告白。「あまりに理不尽。己を貫くほかありません」「これには三河の誇りがかかっております」と悲壮な覚悟を伝えた。
そして、第43話の予告編で衝撃の映像が流れた。光秀が信長の正室・帰蝶と会いに行き、「(斎藤)道三(本木雅弘)様なら、どうなされましょう?」と聞くと、帰蝶が「毒を盛る、信長様に」と驚きの言葉を口にしたのだ。ネット上には「本能寺の変へのトドメは帰蝶プロデュースなのか?」「まさにマムシ娘」「本能寺の変はさまざまな黒幕説があるが、最後に光秀を強く押し出したのは、まさかの帰蝶と師匠の斎藤道三!」などの書き込みが続出、騒然となった。
松永久秀、帝、義昭、家康...みんなの意を汲んだ光秀が哀しい
ネット上では、あと2回に迫った「本能寺の変」の描かれ方に様々な期待と憶測があふれている。
「どんどん孤立していく信長にいよいよ光秀の声すらも届かなくなった。松永久秀、帝、義昭、家康ときて遂に帰蝶まで参戦か。誰か一人の強烈な黒幕の手引きというよりも、関わってきた人みんなの意を汲んで、誠実で真面目な光秀が単独で本能寺の変を起こすことを決意するという流れということなのかな。光秀が着実に外堀を埋められていくストーリーが哀しい」
「家康、義昭、朝廷......各陰謀論を一気に放り込んできたな。羽柴秀吉とは険悪になってきている、着地点が楽しみだな」
「同感。本日の折檻で怨恨説もからめていますね。あと2回なら母上処刑説はなさそう」
「本能寺の変に光秀を押し出したもの。それは帝や義昭をはじめとする色々な人々の麒麟への思いなのか。しかし、最後に強く押し出したのは、まさかの帰蝶と光秀の師匠と云うべき道三。番組前半を丹念に描いてきたのが、ここに繋がっていたのかと思いました」
「『そなたがそう言うなら嫁にいく』『そなたがそう言うなら将軍を奉じ上洛する』『そなたになら平蜘蛛を渡せる』『そなたなら信長の世を見届けられる』『そなた一人の京であれば一緒に戻る』...みんな光秀に頼り過ぎだよ。光秀は真面目で、理想家で、できる男だから、そういうのをスルーできないんだから...」
光秀を大好き過ぎて、怒りをぶつける信長が切ない
そして、信長さえも光秀を追い詰めていく。
「十兵衛が愚直すぎて切ない回でした、今日は。信長もそんな十兵衛が大好きすぎて、帝が一番で、自分が一番にならない事にイラついているんだなぁ、って。信長が十兵衛殴ったあとに『なぜこうなったのじゃ』と言う場面は苦しくなりました。『褒めてもらいたい』と、幼い頃から求める人でしたからね...。そういう意味では信長もかわいそうな人なのかもしれません」
「光秀が信長から扇で折檻を受けるシーン。染谷さんの演技が凄すぎる。それまでの上機嫌から急に冷たい空気感へ、一瞬の面の切り替わりが、眉がス~ッと下に下がるのが怖すぎる」
「信長が、光秀との会話の中で、最初は機嫌がよく、だんだんと怒りが出てくる。この時の信長の座り方が徐々に変わる...細かな演技が素晴らしい!しかし、帝から何を言われたと聞かれ、光秀、もう少し適当に答えろよーと思わず言ってしまった!これも演出、素晴らしい!!」
秀吉と信長の圧倒的な存在感が最後に来て、ドラマを盛り上げている。
「なんか秀吉がやたら偉そうだった。そのやりとりを見ていた細川藤孝の表情。その辺から人間関係が変わり出していたのかな。蔵之介秀吉を見ていると、いつの世も狡猾な人間が上にいき、富を得るだなと思わされますね」
「まだ無名の頃の佐々木秀吉はすごく違和感があって配役おかしくない?って思ったけど、今は羽柴木蔵之介が本当に憎たらしいくらいに適役。佐々木蔵之介さんの演技すごいです。もちろん染谷信長も。長谷川十兵衛が食われ気味な時があるくらい、本当に皆さん演技が上手いからあっという間に時間が過ぎる」
母に愛されず狂気の落ちた信長、愛されて真っ直ぐ育った光秀
「このドラマでは、信長の狂気の原点が、両親、特に母親の愛情に飢えていた事にあったという風に描かれていて、私もリアルだなと思いました。一方の光秀は、あの愛情深い母上に育てられて...なるほど、だから真っ直ぐに育ったのか...人間、いつの時代も育つ環境が大事だなぁと。しかし、信長の狂気が徐々に育っていく過程を、もう少し帰蝶との絡みを交えて見たかったなと思いますね。道三、光秀、信長、帰蝶の関係性が作品の肝なら、やはり駒より帰蝶をもっと出すべきだったかな、と。色々事情があって仕方なかったのかもしれませんが、惜しいですね」
「この信長はとても腑に落ちる。今までで一番自分が持つ彼のイメージに近くて目が離せない。実際周りが恐怖していたのは確かだと思うが、今作みたいに周り中がけしかけた設定だと本能寺後の光秀の孤立の原因をどう描くのか興味深い。手紙を見てもわかるけれど信長は秀吉の妻おねには優しかった。彼女にも心許せる母性を感じていたんだろうなぁ...と思う。信じている者には優しい。でも一旦不信感が生まれると雪だるま式に拗らせる。よっぽどの事がないとその不信は解けない。こういうタイプいるよね」
「憎しみも愛の裏返し。あんなに尊敬していた信長の豹変にとうとう愛想を尽かしてしまった光秀。信長に引導を渡すのは自分しかいないと思ったのも頷ける」
光秀は生き延びて、平和を導く「麒麟」になるのか?
さて、あと2回、どんな展開になるのか。明智光秀には古来、山崎の戦を生き延びて、家康の腹心だった僧・天海になり、江戸幕府の創業に貢献したという説があるが......。
「色々な伏線が張られていますね。その回収は本能寺の変ですが、最後の背中の一押しが、帰蝶の発言なのでしょうか。伏線の中で、秀吉黒幕はなくなった感じです。平蜘蛛同様、天皇との密会がバレたのも秀吉からでしょう。秀吉はずっと光秀を見張っていて、光秀が本能寺に向かった時点で、密偵は秀吉に知らせるべく走ったのではないでしょうか。そうすれば、中国大返しも理解出来る」
「信長の言うように家康が弱虫で、やむなく信長に従ったとしても、自分の正室と嫡男を殺されたら、恨みを抱いても不思議じゃないよね。結果として、自分ができなかったことを、光秀が代わりにやってくれたんだから、ある意味、恩人だ。光秀の重臣斉藤利三の娘を自分の孫の乳母(春日局)にしたのもうなずける話だ。ガラシャの自害事件は関ヶ原の勝敗に少なからず影響しているし、結構光秀は家康に良いアシストしている」
「このドラマでは光秀は、常に誰かに仕えていた。もしかしたら最後に家康に仕えるのではないかな?天海になって人生を全うしたストーリーになる可能性はないかな?そう、麒麟とは最後に家康に助けてもらい、己本人が日本を平和に導く麒麟だったなら最高によい展開だけどね」
「帝とのやり取り。『信長はどうか?』。月は帝も見上げる天の海にいる存在。誰も見た事のないという生き物、麒麟。『十兵衛ならソレを呼んでこれるやもしれぬ...』。義昭との再会も海の上。『海の近くに住むとラチのない夢ばかりみる』...。家康との密会も海。ここにきて天の月と海が大活躍。やはり、麒麟は『天の海』にいる?光秀は天海になる?」
「駒がなぜ最後まで出続けるのか。駒が持っている何でも効く薬。あの薬で光秀が助かるといいが...」
(テレビウォッチ編集部)