菅政権「脱ガソリン車」推進の陰に、テスラ社社外取締役兼務の経産省参与がいた!

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   市川海老蔵(43)がオンラインで配信した「初春 海老蔵歌舞伎」の千秋楽(視聴チケットは3500円)は、新風を吹き込んだと話題を呼んだようだ。

   中でもこの公演で注目されたのは、四代目市川ぼたんを襲名した長女の麗禾(9)が「藤娘」で藤の精を勤めたことだったという。踊りの技術は申し分なかったが、一方で、批判の声が歌舞伎界の中から出たというのである。

   新潮によれば、歌舞伎は女性が舞台に上がることを禁じているが、女の子が出演することはままあるという。だが、「男性の歌舞伎役者が演じてきた大役を9歳の女の子が演じる」(日本舞踊家)というのは、戦後の松竹歌舞伎ではなかったことだった。

   元々、歌舞伎は出雲の阿国が創始者といわれるが、興行後に売春が横行すると禁止になり、その後、成年前の美少年による「若衆歌舞伎」が登場するも、男色が風紀を乱すと再び禁止され、成年男子が演じる今のような「野郎歌舞伎」が登場して、女性を男性が演じる女形が確立された。

   だが市川家は過去にも女性を舞台に上げる取り組みを行ってきたという。だが、歌舞伎は男性がやるものという考えは根強く、「海老蔵だけが特別扱いされている」とやっかむ声が梨園から出てきているようだ。

   今回は新橋演舞場だが、歌舞伎の"聖地"歌舞伎座でも、海老蔵は娘を舞台に立たせることができるのか。昨年夏に、歌舞伎座の公演が再開されてから、海老蔵は一度も出ていないという。

   歌舞伎界の「型破り」男が、古い因習をぶち壊すことができるのだろうか。

官邸に「脱ガソリン車」をプレゼン

   さて、水野弘道という男がいる。先見の明があるというか、抜け目のない人間のようである。彼は大坂市立大を卒業後に住友信託銀行に入社。その後イギリスの投資機関に勤めた後、世耕弘成元経産大臣の知遇を得て、世耕の推しで年金を運用するGPIFの最高責任者になる。

   昨年3月に退任すると、翌月にはEV車でトップを走るテスラ社の社外取締役と監査委員に就任するのだ。その際、大量のストックオプションを得ている。

   それだけなら一人の男の成功譚として聞き流せるのだが、新潮によれば、その後5月には、経産省の参与に就任するのである。水野は官邸にまで「脱ガソリン車」をプレゼンし、それに、ビジョンも政策もない菅首相が乗り、「2030年代半ばまでに電動車の割合を100%にする」とぶち上げたのである。

   たしかに、脱炭素、EV車は世界的な潮流である。そのためテスラ社は、販売台数でいえばトヨタの30分の1程度だが、株価はトヨタの時価総額の3倍にもなり、1月にアメリカの雑誌『フォーブス』が、イーロン・マスクCEOは「世界一の富豪」だと報じた。

   そのテスラ社の株価上昇の何十分の1の手伝いをしたのが水野である。シグマ・キャピタルのチーフエコノミスト田代秀敏が指摘しているように、「経産省参与がテスラ社の取締役を兼任することは、モラルハザードを引き起こすリスク」があるはずだ。

   また、そんな人間を参与にし、吹き込まれたまま、日本のクルマをすべてEV車などにすると公言してしまう菅政権の"軽さ"はいかんともしがたい。

   1月18日に新潮は水野に取材を申し込むと、突如水野は経産省参与を辞任したそうだ。もやは目標を達成したから、役職に未練はないということだろうか。

   新潮は「エコの裏にあったのは、剥き出しのエゴ」だと結んでいる。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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