咳が止まらない菅首相 ワクチン担当相に任命した河野・行革担当相が最後の切り札か?

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菅政権の支持率つるべ落とし

   さて、菅首相報道へいこう。どれを見ても「投げ出し寸前」(文春)「菅政権4月退陣シナリオ」(サン毎)「菅さん、あなたには総理はムリだったね」(現代)「さらば菅総理」(ポスト)と、退陣は決まったといわんばかりである。

   文春は、72歳なのに腹筋百回を日課にしている菅首相が、このところゴホゴホゴホと咳が止まらないことがあると報じている。文春によれば、知人が心配したところ、菅首相は、「医者を呼んで、診てもらっているんだ」と答えたという。コロナでなくても、トップの健康状態は進退に直結することは、一番菅首相が知っているはずだが、それを隠そうともしない。

   このところの各社の世論調査でも、支持率はつるべ落としである。なかでも1月15日に時事通信が発表した調査では、支持率が前月から8.9ポイントも下がって34.2%だった。時事は「個別面接方式」なので、世論の実感に近いため、菅首相にとってはショックだったようだ。

   その日に、4月25日に投開票予定の衆議院北海道二区補選で立候補擁立を見送ると発表したのがその表れだろう。収賄容疑で在宅起訴された吉川貴盛元農相の辞職に伴うものだが、負けるよりいいと踏んだのであろう。

   だが二階俊博幹事長は、「永久に自民党からは出さないってことなんだな」と吐き捨てたという。二階にまで見捨てられたら政権存続は難しい。菅首相が窮余の一策としてひねり出したのが、河野太郎のワクチン担当相任命だった。

   党への根回しもせず独断で決めたという。2月下旬からはワクチン接種を始めるといい続けている菅にとっては、最後の切り札といっていい。

   だが、ここでも3つの「難題」が立ちはだかっていると、文春はいう。1つは、製薬会社の所管は厚労省、輸送や倉庫は国交省、ドライアイスなどは経産省、接種のオペレーションは自治体が行うので総務省になるという「縦割り行政」である。

   2つ目はワクチンの空輸だという。ドライアイスに詰めた段ボールにワクチンを入れて密閉して運ぶが、「ドライアイスは気化すると体積が増えるため、航空機に積める量が限られてしまう」(厚労省幹部)。よって早く大量に輸送したくてもできないというのだ。

   3つ目は、安全性、有効性。日本ではまだ160人を対象に治験を行っているだけだから、安全性や有効性の判断ができないという。

   何のことはない、まだまだクリアしなければならない重大な問題が解決されず、菅の掛け声だけが響いているようだ。これでは東京オリンピックなど夢のまた夢。

   それに実行力もあるようだが、気の短さではイラ菅を上回るかもしれない河野では、どこかで決定的な衝突が起こるはずである。その証拠に、NHKが報じたワクチン接種のスケジュールに早速、河野が噛みついた。『ニュースウオッチ9』は、

   「厚生労働省が現在、安全性や有効性の審査を進めていて、承認されれば、来月下旬をめどにおよそ1万人の医療従事者に先行して接種を開始する計画です。続いて、3月中旬をめどに医療従事者などおよそ300万人に、3月下旬をめどに65歳以上の高齢者およそ3600万人に接種できる体制を確保し、4月以降、基礎疾患のある人や高齢者施設の従事者などを優先しながら順次、接種を進めることにしています」

   河野がツイッターで、「うあー、NHK、勝手にワクチン接種のスケジュールを作らないでくれ。デタラメだぞ」。しかし、これは厚労省がサイトに載せているスケジュールだそうだ。

   省庁との連携などは一番苦手な河野担当相が、どこかで怒鳴り散らすか、省庁側が呆れて動かないか、何かが起こりそうである。菅政権を吹っ飛ばすのは、ひょっとすると菅の最後の頼みの、この人間かもしれない。(文中敬称略)

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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