1月6日に起きたトランプ支持者たちの連邦議会議事堂乱入は、5人の死者を出すという惨事になった。
議事堂が襲撃されるのは1812年に米英戦争が始まり、英軍が占拠して以来だという。アメリカ史に大きな汚点となったこの事件について、この国の週刊誌はあまり関心がないようだが、ニューズウイーク日本版が詳しく報じている。
この乱入が、トランプがホワイトハウス前で支持者たちに、「選挙は盗まれた」「異議を唱えるために議事堂へ行け」と扇動したことで起きたことは疑いようがない。トランプは「反乱教唆」で訴追されるか、2度目の弾劾裁判で罷免される可能性もある。共和党内からもトランプを見限る動きが出ているというから、可能性がないわけではないようだ。
この乱入は偶発的に起きたのではない。「捜査機関は議事堂の敷地内で即製の爆弾を発見」(同誌)したことでも分かる。元CIAの工作員でコラムニストのグレン・カールは、「連邦議会の防衛ラインを突破した暴徒が迷路のような議事堂のどこに行けばいいか知っているように見えた」「彼らは、議事堂内で議論する議員たちを守る役目の警官の一部から、少なくとも暗黙の支援を受けているように見えた」「警備担当者の一部については、(中略)彼らと一緒に自撮り写真に興じている姿が映像に残っている」と指摘している。
また、警察が暴徒の襲撃に対処する計画を立てていなかったとは考えにくいという。ワシントン市長は数日前に州兵を招集していたことから、「トランプ支持派による議事堂襲撃計画は周知の事実だった」としている。ここにアメリカが抱える深刻な病根がある。
乱入して死亡した女性は極右グループ「Qアノン」の信奉者だという。「Qアノン」は、トランプはアメリカを救うために神が送り込んだ救世主で、世界を牛耳る官僚や民主党、ユダヤ人、CIA職員などから、われわれを守ろうとしている。それなのに、そのトランプを抹殺しようとしていると信じ込んでいるそうだ。
カールによれば、共和党は右傾化し続け、それまで自分たちが中心だと思っていた白人たちの被害者意識をすくい取り、民主政治の「抑制と均衡」の仕組みを弱体化させようとしているという。トランプが去ったからといって彼と共和党が生み出した、「Qアノン」の狂気とファシズムは、破壊を一層進行させるかもしれないと結んでいる。
ポストで、池上彰と対談している潜入ジャーナリスト・横田増生は、その大混乱する現場にいたそうだ。「僕は思わず取材メモに、『アメリカの民主主義が死んだ日』と走り書きしました」といっている。
バイデンが、ここまで堕ちたアメリカの民主主義を4年間で立て直せるとは思えない。アメリカがくしゃみをすると日本は風邪をひくといわれる。かの国の民主主義の崩壊は、言葉としてしか残っていないこの国の民主主義を、根こそぎ引きちぎってしまうのだろうか。
盛り上がらない大相撲
話はガラッと変わる。大相撲が始まったが盛り上がらないこと甚だしい。コロナに感染した力士が出たとして、全力士665人の約1割にあたる65人が休場となった。
その上、この場所に進退をかけるといっていた白鵬がコロナに感染し、鶴竜も腰痛だといって休場してしまった。
11月場所後に、横綱審議委員会から2人とも「注意」を受けていたのに、お構いなし。
唯一の目玉は、横綱昇進がかかっている貴景勝だったが、重圧のためか初日から4連敗する始末である。
これだけの休場力士が出たのだから、今場所は休場すべきだと思うが、協会はNHKの放映料を失いたくないからだろう。
メンツを失った横審が場所後に、白鵬、鶴竜に「引退勧告」を出せるかだが、鶴竜はともかく、白鵬はどこ吹く風と知らん顔するのだろう。
文春では、「コロナが怖い」といって休場を親方に申し入れたのに、ダメだといわれたため引退した元三段目の琴貫鐵(22)の母親が、思いのたけを語っている。
コロナだけではなく、過去には兄弟子からのいじめや暴力があったという。母子家庭で、中学卒業と同時に佐渡ヶ嶽部屋に入った。
だが、入門後、兄弟子から下駄やデッキブラシで殴られ、のどや心臓、左ひじなどの手術を4回もしたそうだ。彼女は2年前に部屋に出向き、親方と話そうとしたが、時間がないと聞いてはくれなかった。母親は最後にこういっている。
「佐渡ヶ嶽部屋には、息子を一人の弟子、人間として扱ってほしかったです」
相も変わらず繰り返される相撲部屋のイジメや暴力沙汰、それに八百長疑惑。もはや国技などといわないほうがいい。