2度目の「緊急事態宣言」、溢れる菅首相、小池都知事、尾身茂分科会会長の悪評 もはや政権末期か!

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   週刊誌には菅首相、小池都知事、尾身茂分科会会長への悪評が溢れている。

   なかでも菅首相は、就任してわずかなのに「首相失格」の烙印が押され、最初70%もあった支持率は、共同通信の世論調査(1月9日、10日)では41.3%まで落ち、不支持率が42.8%と上回ってしまった。もはや政権末期といってもいい。

   文春によれば、「菅では秋の選挙に勝てない」と安倍や麻生だけではなく、菅政権をつくった二階幹事長まで考え始めたという。次の候補として二階は、野田聖子幹事長代行を手持ちのカードとしてチラつかせているそうだが、安倍と麻生は新潮によれば、「岸田文雄元外相以外にありません」(政治ジャーナリスト・鈴木哲夫)

   菅首相は実行力に問題ありだが、自分の言葉でしゃべれないことも、国民からそっぽを向かれる大きな要因である。1月7日に2度目の「緊急事態宣言」を発令すると表明したときの会見を、「結婚式に招かれた来賓のスピーチのよう」と新潮で政治部デスクが評したが、いい得て妙である。

   今回の宣言を出すに至ったのも、"天敵"の小池都知事に押し切られたからである。週刊朝日によると、1月2日に小池と神奈川、千葉、埼玉3県の知事が、緊急事態宣言の再発出を求めて電撃的に内閣府を訪問し、菅首相と面会させろと申し入れたが、菅は会わず、西村担当相が面談した。

   「会議は紛糾して3時間に及んだが、その後のぶらさがり取材で西村氏は再発出について『検討する』と答えるのみ。この間に菅首相は議員宿舎に帰宅しており、コロナ対策に消極的な印象を与えてしまった」(週刊朝日)

   何も決められない担当大臣と何も考えていない首相では、対応が後手後手になったのも無理はない。「西村大臣は会談前に菅首相から『再発出すれば大変なことになる。小池氏主導の提案には乗るな』といった話をされていたそうです」(自民党幹部)

   再発出したくない菅官邸は、何か強力な攻めどころはないかと事務方に探させ、ようやく見つけたのが、飲食店の時短の前倒しだったと、官邸関係者が話している。

   大阪市は飲食店への時短要請に伴う閉店時間を21時としていたが、東京など首都圏は22時のままだった。そこで西村は小池ら4知事に対して、閉店時間を20時まで前倒しするよう求めたのだ。

   1都3県がこの条件での合意に時間がかかり、いずれ足並みが乱れるという思惑もあったようだが、翌3日には1都3県の調整があっさり完了し、「『20時閉店』を表明されてしまった。誤算でした」(官邸関係者)

   菅首相は度々、「北海道、大阪など、時間短縮を行った県は結果が出ている」と繰り返し主張してきたが、週刊朝日が入手した政府の内部資料によれば、北海道と大阪の直近約2カ月(11月~1月5日)の死者数はそれぞれ369人、377人と、東京都の193人を大きく上回っているという。

   「7日には大阪府内の新規感染者数が過去最高の607人を記録した。小池氏を悪者にするため『北海道や大阪は感染押さえ込みに成功した』という"印象操作"に他ならない」(週刊朝日)

   追い込まれた菅は、4日の年頭会見で「緊急事態宣言の検討に入る」と表明せざるを得なかった。海千山千の女帝の策の前に屈したのである。

"行政の徹底したスリム化"目指す菅政権

   菅に対する論評で興味深かったのは、文藝春秋(2月号)の片山杜秀慶應大学教授だった。

   菅にはよく「国家観がない」といわれるが、菅政権が打ち出しているデジタル化の推進、マイナンバー制度の活用、菅のブレーンの竹中平蔵がアドバルーンを上げているベーシックインカムなどに、目指していることが明確に示されているというのだ。

   「一言で言えば、新自由主義にもとづく"行政の徹底したスリム化"です。この傾向が、一定のオブラートに包まれていた安倍政権の時よりも剥き出しになっています」

   マイナンバーに紐づければ所得や貯蓄から健康状態まで把握できる。ベーシックインカムを導入すれば、個々に年金や保険料を計算する手間が省けるから、役人がいらなくなる。

   「要するに、新自由主義的な"資本の論理"からすれば、『国民国家』自体が邪魔でしかないのです。(中略)AIやロボットを駆使して『いかに人件費を削るか』が、新自由主義の成長モデルだからです」

   この論理に従えば「人権」など簡単に吹き飛び、待っているのは「デストピア」でしかない。この流れにブレーキをかける政党が必要なのだが、片山は「絶望しか感じられません」と結んでいる。

フグ宴席に出た石破茂・元自民党幹事長

   本来なら、菅に替わるべき人間は、安倍の傀儡の岸田ではなく、石破茂・元自民党幹事長であるはずだが、この御仁も文春砲の餌食になってしまった。

   1月8日、福岡県博多市で講演を終えた石破が、山崎拓元副総裁、三原朝彦衆院議員や県会議員、地元財界人ら8名と、高級フグ料亭に入り、2時間にわたって料理を堪能したというのだ。文春によれば、9人中4人が70歳以上だったそうだ。

   その日は、二階幹事長が党所属の全国会議員に文書を通達し、「飲食を伴う会合への参加を控える」よう要請していた。昨年末には、菅首相が「ステーキ8人会食」で厳しい批判をされたばかりである。

   石破本人は、文春の取材に対して、体温を計れば、消毒もしたし、「抑制の利いた会でした」といっているが、当日居合わせた客は、体温計測も消毒もすすめられなかったと"告白"している。

   国民に不要不急の外出を自粛せよと強いておいて、お前たちは9人も集まって一人4万円のフグ三昧かよ。この会の呼びかけ人である山崎拓が、頑なに「参加していない」といい張っているのも、「こんな時にまずいところを見られた」という意識があるからだろう。

   石破の脇の甘さが、こんなところでも出てしまった。菅の次を本気で狙うなら、ふんどしの紐を締め直したほうがいい。

尾身茂分科会会長と「感染ムラ」の間違い

   さて、菅も悪いが、尾身茂感染症対策分科会会長と「感染ムラ」はもっと悪い、即刻退場させろと、サンデー毎日で医療ガバナンス研究所理事長の上昌広が吠えている。彼らの間違いは、

   「発熱者と濃厚接触車だけをPCR検査対象とするクラスター戦略にしがみつき、感染を爆発的に広げる無症状感染者を市中に野放しにした。(中略)であるにもかかわらず、失敗した張本人がそれを認めることもなく、英雄気取りでロックダウンしろと言っている。その張本人をメディアも叩かない。可哀想なのは失敗の被害者たる飲食店主たちだ」

   そして、「これまで何度も口を酸っぱくして申し上げてきたが、PC Rの『頻回検査』しかコロナ拡大を防ぐ道は無い。

   世界の趨勢でもある。昨年12月2日には、PCR検査体制の強化が最も有効なコロナ対策である、との論文が医療政策のトップジャーナル『ヘルス・アフェアー』誌に掲載され、話題となったが、日本で報じられることはなかった。

   『専門家』たちはいまだに偽陽性問題、医療崩壊の懸念を言い続け、検査抑制姿勢を見直すつもりはない。彼らが言うような形でのPCR検査多用による医療崩壊ケースは世界には一つもないが、皮肉なことに日本では、検査不足が市中感染蔓延を通じて医療崩壊なる現象を招来しつつある」といい切る。

   尾身がやるべきことは、「米英が早い段階で(ワクチン=筆者注)接種を始めたので、半年たてばある程度副作用の全体像が見えてくるはずだ。その際菅首相は製薬企業に対し、高齢者、アジア人データを求めるべきだ。尾身氏が専門家として助言すべきは、マスク会食ではなく、こういったことについてである」と指摘する。

   新潮は、尾身が理事長を務める独立法人が都内で運営する病院はいくつもあるのに、コロナ患者の受け入れには非協力的だと厚労省周辺関係者が批判している。

   「"首都圏は感染爆発相当"などと国民の不安を煽っている彼は、実はコロナ受け入れに消極的なのです」

   二枚舌を使い分けているようだが、コロナ対策の司令塔がこれでは、菅首相が正しい判断を下せるわけはない。

   では、菅の鼻面を引き回している小池都知事はどうか。小池や日本医師会は、都民や国民が知るべきデータを出していないと、東京慈恵会医科大学の "神の手"といわれる大木隆生外科統括責任者が新潮で断じている。

   大木は、日本医師会がいうような「医療崩壊」はしていない、経済を動かしながらコロナと共生するしかない、コロナの死因はインフルエンザより下で亡くなった人の平均年齢は80歳を超えている、人間ドックは不急医療の最たるものだから4~5月までやるなと主張している。

   頷けるところが多々あるが、なかでも、重症者に必要なICUは、東京都を含めた日本中に沢山あるのに、それが知らされていないという指摘に驚いた。

   「東京都にはICUとHCU(準集中治療管理室)を合わせて2045床ある。(中略)少なくともハードウェアのキャパシティがこれだけあることを知る権利が、国民にはあります。(中略)全国のICUの総数が1万7377だということも報じられていません。全国の重症者数が850なら使用率は4.9%です。政府も医師会も都も、こうしたファクトを示したうえで、どうしたら使えるようになるのか議論してほしいです」

   大木は、外科医は無力ではない、人工呼吸器は扱えるといっている。「新型コロナの治療は意外にベーシックな内容なので、感染症医や呼吸器内科医が指揮しながら、前線には外科医をふくむほかの診療科医がいるという布陣はとれます」(大木)

   罰則を含む特措法など慌ててつくる前に、医療崩壊しないような方策を即刻とることが、政府のやるべきことであるはずだ。

   サントリーホールディングスの新浪剛史代表取締役社長も、「いま特措法改正で、従わない飲食店に罰則を科すことが検討されていますが、私は即罰則を科すことには反対です。(中略)例えば営業時間短縮や感染対策が不十分な店舗には、まずスーパーバイザーを派遣して指導する。それでも従わなければ、二度目からは罰則を科せばいい」

   新浪は、小池都知事のやり方も批判している。

   「歓楽街をターゲツトにした『夜の街』もそうでしたが、小池知事はワーディングや会見での発信は巧みです。ただ、もう少し他に実効性のある対策の打ちようがあったのではないでしょうか。これだけ無症状の感染者が増えているわけです。無症状=自宅療養ではなく、他人との接触をさらに減らすため、ホテル以外に隔離スペースを用意する、とか、最前線で活躍頂いている医療関係者への給料を補填するなど、できることは色々あるはずです」

   新浪社長のいうように、コロナをいち早く終息させ、安心感がなければ消費は上向かない。

   罰則を科せば国民はいうことを聞くだろうと考え、戦前の治安維持法のようなものをつくり、誰かさんによく似た「特高警察」を全国に配置しようというつもりかもしれないが、そんなことをすれば、溜まりに溜まっている国民の怒りが爆発するだろう。(文中敬称略)

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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