全国で新型コロナウイス感染が広がるなかで1月13日、緊急事態宣言の対象地域に大阪など7府県が追加され、中国などからのビジネス往来も継続の方針を転換して一時停止になった。飲食店への営業時間短縮が要請され、不要不急の外出自粛が要請される中、自民党の石破茂・元幹事長が1月8日に福岡で9人での「高級ふぐ会食」を行っていたことを「週刊文春」が報じた。1人4万円の「特選ふぐ懐石」を注文していたという。政府は1都3県に緊急事態宣言を発出した、まさにその日の出来事だった。記者の直撃を受けた石破氏は「完全会食自粛なんてしたら店がみんな潰れちゃう。食事会は抑制の利いた会だった」と弁解していた。
政府の対応は後手に回り、自粛要請を守らない国会議員が現れるという状況で、ノーベル賞を受賞した4人が共同で1月8日に、政府の新型コロナウイルス対策について5つの緊急提言をした。提言を発表したのは、京都大学の山中伸弥教授、北里大学の大村智特別栄誉教授、東京工業大学の大隅良典栄誉教授、京都大学の本庶佑特別教授。このうち、本庶特別教授と大隅栄誉教授がリモートで生出演した。
4人のノーベル賞学者が提言を出した理由について、本庶特別教授は「医学、生命科学の研究者の立場から対策が有効になるための提言を示した」、大隅栄誉教授は「コロナ感染をどう捉えるべきか、収束に向けての道筋を見つけるための提言」とスタジオコメント。
「政府は順番間違えている」と本庶佑特別教授
提言その1は「医療機関と医療従事者への支援を拡充し医療崩壊を防ぐ」。本庶特別教授は、「一つの病院をコロナ対応病院とするほうが、1床ごとに補助金を出すよりはるかに効率がいい。医療従事者の労働軽減にもなる」と指摘。大隅栄誉教授は「医療従事者が身を削りながら仕事している。それに対し具体的な対策がもう少し前からあるべきだった。医療従事者の絶対数を増やす努力が重要な時期だ」と主張。北村特任教授も「廃校になった校舎を利用するなどして絶対数を増やすことが必要」とコメントした。
提言その2は「PCR検査能力の大幅な拡充と無症候感染者の隔離を強化する」。実際に、日本の検査数は1000人当たり0.5人で、英国の8.1人、フランスの4.4人などと比べて圧倒的に少ない。本庶特別教授は「少なくとも"感染しているかも"と思ったら即座に検査を受けられる体制を作るべき。補助金をばらまくより、検査にお金を使うほうがコスト的にも社会的にも有効。無症候感染者で隔離すれば、彼らに宿泊先や食事を提供するホテル業界、飲食業界、生産者にもプラスになる。このほうがGoToより遙かによいと思う。厚労省は無症候感染者が増えると医療崩壊になるという変な理屈を言っていたが、全く理解できない」と現在の対策を鋭く批判。大隅栄誉教授も「今からでも遅くないので不安を抱える人がすぐに検査できるようにすべき」と訴えた。
テレビ朝日コメンテーターの玉川徹は「厚労省がPCR検査拡大を認めない。検査、隔離で感染症が抑えられない、意味はないと思っている」とコメントすると、本庶特別教授は「中国や台湾が封じ込められたのは地域丸ごとの検査、強権的隔離があったため。医学の教科書にも"感染者を見つけて隔離するのが最も良い"と書いてある。なぜ厚労省がやらないのか理解に苦しむ」と話した。
このほかの提言は、その3「ワクチンや治療薬の審査及び承認は独立性と透明性を担保しつつ迅速に行う」、その4「今後の新たな感染症発生の可能性を考え、ワクチンや治療薬などの開発原理を生み出す生命科学およびその社会実装に不可欠な産学連携の支援を強化する」、その5は「科学者の勧告を政策に反映できる長期的展望に立った制度を確立する」だった。
本庶特別教授は「医療を守り、安全な社会を作ることでしか経済は回復しない。政府はこの順番を間違えている。政府主導というより国民の良識があってここまで持ちこたえたが今は危険な状況」と言い、大隅栄誉教授は「長期的な展望が欠落している」と指摘した。
テレ朝コメンテーターの玉川は最後に「やはり合理的精神の方々は検査・隔離を打ち出しますよね」と自説が支持され納得のコメントを残した。