事件現場に残された遺留品が醸し出す『違和感』を頼りに、声なき遺体が訴えたかったメッセージを読み解いて事件を解決する一方、空気を読まない超マイペースの捜査で周囲をイラつかせる。そんな『風変わり刑事』の活躍を描いたシリーズも誕生10周年を迎えた。
関西財界の大物・深谷成章(山田明郷)が、京都市内の大邸宅で毒入りの紅茶を飲まされて殺害された。発見時に邸宅にいたのは、成章の妻・美幸(福井裕子)、百貨店の社長を務める長男・尚一(草野イニ)、フィットネスクラブを経営する長女・佳菜子(山田キヌヲ)、画廊を営む次男・俊介(永野宗典)、それにメイドの奥田彩月(中山忍)と美川依子(吉川依吹)の6人だ。
深谷家では以前から、成章の資産相続をめぐって家族同士が対立しており、中でも時価3億円といわれる夭折の画家・中森司郎が遺した名画『黄昏』は、3兄妹それぞれが手に入れたがっている成章秘蔵の品だった。
成章はこの名画の相続争いに巻き込まれ、何者かに殺された疑いが濃厚だ。
事件の背後に古美術官邸の重鎮の存在が...
京都府警捜査一課特別捜査対策室のメンバーとともに臨場した刑事・糸村聡(上川隆也)は、現場からシルクの布に包まれた1本のスプーンを発見した。殺された成章自身も油絵を描いていたようだが、そのスプーンは画材を入れる木箱の中に保管されていたのだ。
なぜ画材入れの中にスプーンが? どうしても気になった糸村は、京都府警科学捜査研究室の研究員・村木繁(甲本雅裕)に鑑定を依頼し、スプーンに微量の絵の具とペインティングオイルが付着していたことが分かった。このスプーンは一体誰が、何のために使ったのか? 謎は深まるばかりだ。
そんな折り、毒物が混入されていた紅茶ポットから、意外な人物の指紋が発見された。捜査は急展開するかに思われたが、同時に、古美術鑑定の重鎮・園田蓮(柄本明)の存在が事件の背後に見え隠れしてくる。特別捜査対策室室長代理・佐倉路花(戸田恵子)はかつて、園田をある事件の黒幕として捜査したものの、園田の狡猾さゆえに追い詰めることができなかった曰くつきの人物だった。
対策室の捜査が行き詰まりを見せる中、「のんきにどこをほっつき歩いているのよ!」という佐倉の叱責をよそに、糸村はスプーンの謎を解くべく自分も油絵を習い、晩秋の京都の風景を描く。そして、名画に隠されたある秘密に気づいた。
ついにスプーンの謎を解くことに成功した糸村は、深谷邸に乗り込んで「3分でいいんです。僕に時間をいただけませんか?」と事件の真相を語り始める。(よる8時放送)
寒山