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『ニュースウオッチ9』有馬嘉男キャスター降板に官邸圧力説

   文春が、NHKの看板番組である『ニュースウオッチ9』の有馬嘉男キャスターが、来年3月に降板すると報じている。3年近くやっているから、交代の時期ではあるようだが、裏には、菅首相の怒りがあるというのだから、聞き捨てならない。

   菅が出演したとき、事前の質問項目になかった学術会議の任命拒否問題をしつこく問い詰めたことで、内閣広報官が原聖樹政治部長に抗議したそうだ。

   有馬キャスターは、たまにではあるが、政権批判めいたことを口にすることがある。NHKの人間としては精一杯なのだろうが、NHKを国営会社と考えている安倍や菅にとっては、腹立たしいのだろう。

   以前にも、安全保障や外交面で安倍政権に対して批判的な立場だった大越健介キャスターが突然左遷されたことがあった。もし今回も政権に忖度して有馬を降板させるようなことになれば、もうNHKなんかいらない。

   ポストは「NHKの受信料は300円でいい」という特集を組んでいる。NHKは受信料を"義務化"したから、局員に高級を払っても内部留保が3700億円を超えるという超優良企業である。

   それなのに、視聴率稼ぎのためにお笑い芸人を大勢出し、愚にもつかないドラマをつくり続けている。ポストによると、受信料の半分以上が娯楽番組の制作費に充てられているそうだ。Nスペもこのところ見るべきものがない。

   少し前に、菅のブレーンである高橋洋一嘉悦大学教授が「Eテレビを売却せよ」といって物議を醸した。高橋は今号でその真意はこうだという。

   2%しかない視聴率のEテレは、電波という国民の共有資産が有効利用されていないので、電波オークションでEテレの「周波数帯」を売却して、番組はネットで配信すればいいというのだ。

   そのようにスリム化して得た資金を受信料引き下げなどに使えばいい。一理はあるが、心配なのは、菅はこの高橋のアイデアと引き換えに、NHKにさらなる圧力をかけ、政権御用達化をさらに進めるのではないかということだ。

元木 昌彦(もとき・まさひこ)
ジャーナリスト
1945年生まれ。講談社で『フライデー』『週刊現代』『Web現代』の編集長を歴任。講談社を定年後に市民メディア『オーマイニュース』編集長。現在は『インターネット報道協会』代表理事。上智大学、明治学院大学などでマスコミ論を講義。主な著書に『編集者の学校』(講談社編著)『週刊誌は死なず』(朝日新聞出版)『「週刊現代」編集長戦記』(イーストプレス)『現代の“見えざる手”』(人間の科学社新社)などがある。

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