赤い糸から始まった物々交換、総額300万円近くに膨らむ 現代版わらしべ長者はコロナ支援に

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   武田真一キャスターが赤の糸巻きを手に、こう語りかけた。「この秋、赤い糸をキッカケに物々交換による小さな助け合いが始まりました。見ず知らずの人がより高価なものへと交換していくプロジェクトです。交換の輪は全国津々浦々に広がり、思わぬものに膨らんでいきました」

   企画したのは大阪の「NPOみらくる」だ。長引く新型コロナで人と人との支え合いが少なくなったと感じた吉村大作理事長が、知人や友人だけでなく、ブログや電話で「わらしべ長者なんです。どんどん交換して大きくしていきます」と呼び掛けた。わらしべ長者とは、貧しい男がより高価なものへと物々交換を重ね、金持ちになっていく昔ばなしだが、現代版わらしべ長者は、最終的に手元に残った商品は現金化して、コロナで困窮する人を支援するNPOに寄付する。

   吉村さんが100円ショップで購入した赤い糸との交換を最初に申し出たのは、鹿児島市のコーヒー豆販売店店主だった。疫病退散の妖怪をモチーフにしたオリジナル「アマエビコーヒー」を売り出し、売り上げの一部を医療団体に寄付してきたが、赤い糸プロジェクトに賛同して、このコーヒー9000円分と交換した。

   次のアマエビコーヒーとの交換に応じたのは、東京・中野のまんが制作会社で、商品のPRや社員向けの漫画の制作権(5万円相当)を提供した。この制作権を元プロ野球選手がユニフォームなどと交換し、これを沖縄・粟国島のパン販売店店主に寄付。粟国島は来島中止要請で観光客が激減していて、店主は「コロナが落ち着いたらぜひ遊びに来てください」というまんがを制作してもらって、SNSに流した。100件超の「いいね」があったという。

   大阪・鶴見区のインク製造会社は色鉛筆2000セット、30万円分を提供した。新型コロナ禍で抗菌効果を施せるインクが大ヒットして、「利益を子どもたちに還元したい」ということだった。この色鉛筆をイヤホンメーカーが100個50万円分と交換した。

家を提供する人も

   なんと、家屋(780万円)を提供したいという人も現れた。フリースクールにするつもりだったが、コロナで生徒を集められなくなって宙に浮いてしまったのだという。近所の保育士が母と子の居場所を作りたいと引き受けを申し出て、あめ玉270個との交換となった。780万円の権利が1個30円になってしまったが、このあめ玉が多くの人を巻き込んでいった。

   あめ玉1個と、舞台美術製作者は「おもちゃの図面を引く権利」、ネイルサロンの店長は「ネイルアート1回無料権」、カフェの経営者は「地ビール5杯無料券」と交換、「記念品製作権」(7万円)、「ホームページ制作権」(100万円相当)、ついには山つきの築100年の古民家(220万円)にも化けた。

   武田「11月30日(2020年)のプロジェクト最終日、吉村さんの手元には、パソコンや軽自動など30の品が残り、総額300万円近くに上りました。年内に、新型コロナで困っている人の手元に届けたいとしています」

   残った色鉛筆やあめ玉は保育園に寄贈され、イヤホンは大阪府に寄付された。吉村さんは「誰も長者にはならないんですけど、心は豊かになって、支え合いに気づいていく物語だったんじゃないですか」と語った。

   武田「希望を感じます。人を思う小さなやさしさが社会をつなぐ大切さに、気付かされました」

※NHKクローズアップ現代+(2020年12月16日放送「心をつなぐ"わらしべ長者"~物々交換から見るコロナ禍の一年~」)

文   カズキ
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