前回に引き続き、私が手がけた音楽バラエティ「THE夜もヒッパレ」について振り返って今思うことについてお話しします。
番組にはいろいろなアーティストが出演しましたが、「新旧のバランス(出演者)」をとるということが大事でした。
橋幸夫さんに、シャ乱Qの「シングルベッド」を歌ってもらおうとしたときのことです。本人は歌うつもりがあったのに、事務所に「他人の歌を歌うなんて」と反対されて、どうしようかと悩んでいるところを説得して、なんとか歌ってもらいました。その後のコンサートで、ファンの方から「シングルベッドを歌ってくれ」と声がかかったそうです。橋幸夫さんと「シングルベッド」が合っていたのです。
また、小沢健二の歌を、ハウフルスの菅原正豊さんのアイデアで、ジェリー藤尾さんに歌ってもらったときのことです。テレビ雑誌に「この番組は"切れた"」と書かれたほど、ジェリー藤尾さんの歌は、素晴らしいものでした。"切れた"という表現は"はじけた"という意味です。
素の安室奈美恵の面白さを引き出したのは中山秀征
これも菅原のアイデアですが、司会陣の三宅裕司たちが話しているときに、わざと赤坂泰彦が次の歌紹介で割り込んで来るということがあったとき、他の局の人から「誰か偉い人がQ出し(指示)をしているのではないか」と言われることもありました。演出と出演者の間では了解済みのことなのですが、当時のテレビ界の常識では考えにくいことだったのでしょう。
以前にも述べましたが、これも司会の中山秀征と安室奈美恵のレギュラーコーナーで、中山が安室のキャラクターをいかした"演技付け"をしたことも、大きかったのです。ランキングの話題をテーマにしたコーナーだったと思いますが、素の安室の持つ面白さを、中山が上手く引き出していました。
「THE夜もヒッパレ」を担当して、心から思ったのは「歌が上手いということは、いいことだ」ということです。それなくして、この番組は成立しなかったと思います。