12月6日未明、「はやぶさ2」が6年ぶりに帰還し、3億キロ離れた小惑星「リュウグウ」のサンプルの入ったカプセルを地上に投下した。8日にはそのカプセルも日本に帰還。はやぶさ2のプロジェクトマネージャー・津田雄一さんがリモートで番組に生出演し「到着したカプセルの側の部分を見たのですが、中の電子機器は6年間飛行した後とは思えないほどピカピカの状態でした」と喜びを語った。はやぶさ2は、リュウグウの砂と地下物質を採取して持ち帰るという世界初の快挙を成し遂げたことになるが、その舞台裏は想定外の連続だった。
リュウグウ表面は凸凹激しく、着陸地点見つからない!
はやぶさ2が小惑星リュウグウに到達したのは2018年6月。しかし、送られてきた映像に現れたのは岩石だらけの小惑星の姿だった。表面が凸凹で着陸スペースが見つからず、いきなり窮地に立たされた。そこで、メンバーはリュウグウ表面の数万個もの岩石を分析し、10万通りのシミュレーションを重ね、ついに6メートル四方の隙間を見つけ、その狭いスペースにタッチダウンする決断をしたのだった。翌19年2月、タッチダウンは成功し、はやぶさ2はリュウグウの砂の採取に成功した。
しかし、はやぶさ2のミッションのクライマックスは2回目のタッチダウンにあった。リュウグウが誕生した当時の状態にあると想定される地下物質を持ち帰るのだ。19年4月、はやぶさ2は爆破装置で人口クレーターを作ることに成功。「ここに降りることができれば、世界を数十年リードすることができる」。メンバーは沸き立った。
だが、またも大きな難題が生じた。クレーターの中は大きな岩石だらけで着陸は極めて困難だったのだ。1回目のタッチダウンに成功したのだから、2回目の挑戦はせず、帰還してもいいのではないかという意見も出たほどだ。だが、メンバーは諦めず、クレーターの周辺に散らばった地下物質が採取できないか、検討を重ねた。
可能性は2通りあった。1つはクレーターの南側。平らだがクレーターから遠く、地下物質が少ない。もう1つは北側。岩石が多く危険だがクレーターから近く、多くの地下物質がある。意見は真っ二つに割れ、津田さんも「迷った」と告白する。結論は安全策だった。クレーターの南側へのタッチダウンを試みたのは5月。しかし、そこに思わぬことが起きた。
異常を察知したはやぶさ2が急上昇したのだ。想定外だった。だが、急上昇時に撮影された写真が幸運をもたらした。北側に6メートル四方の平地が見つかったのだ。津田さんは北側へのタッチダウンを決断し、その結果、はやぶさ2は史上初の地下サンプル採取に成功した。
津田さんは、2回目のタッチダウン時の心境を「タコせんべい」と表現している。「1回目に採取したサンプルがはやぶさ2の中にある。そのうえで挑戦すべきか、JAXA全体の議論になり、上層部はもう帰ってきてもいいとしたのですが、チームとしてはやりたいという声が強かった。私は、上から下から押しつぶされそうで、タコせんべいだと思った」(津田さん)